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第2節 

3 農業被害

 近年、都市地域の拡大及び生活様式の高度化に伴い、都市汚水の増大、汚濁物質の複雑化等が進み、これら都市汚水の流入する河川及び農業用水の水質汚濁が著しいものとなっている。このことは、農業生産の基盤である土地及び水に悪影響を及ぼし、農作物への被害をもたらすほか、農村の生活環境の悪化をももたらしており、農業生産の安定及び環境保全の両面から重要な問題となっている。
 水質汚濁による農業被害の現状は、49年度に実施した調査によると、第3-2-2表に示すとおり、全国で被害地区数約1,400地区、被害面積約165千haである。
 地域別に見ると、東海地域が約38千haで最も大きく、全被害面積の23%を占め、次に、東北地域が約28千haで全被害面積の17%となっている。
 汚濁源別に見ると、都市汚水による被害が約92千haで最も大きく、全被害面積の55%を占め、次に、工場排水による被害が約41千haで全被害面積の25%となっている(第3-2-1図参照)。
 ところで、49年度の調査結果を45年度の調査結果と対比してみると、被害地区数は10%減、被害面積は、15%減となっている。しかしながら、新たに被害が発生した面積が約68千haあり、その69%は都市汚水によるものである。このことは、都市地域への人口集中及び農村地域におけるスプロール的都市化現象が急激に進む反面、公共下水道施設等の整備が遅れていることが原因と見られる。
 被害面積を地域別に対比してみると、東北地域は29%(約6千ha)増、北海道は12%(約1千ha)減、東海地域は30%(約16千ha)減となっており、そのほかの地域はほぼ横ばいである。汚濁源別に対比してみると、都市汚水による被害は41%(約27千ha)の増加、工場排水による被害は47%(約36千ha)の減少となった。被害減少理由を見ると、45年度被害地区のうちこの4か年間に農地転用により農地でなくなったもの(約13千ha)を除いて面積78千haの地区が、公共事業及び汚濁原因者の措置等により被害を解消している(第3-2-2図参照)。

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