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第2節 

1 環境影響評価の推進

(1) 環境影響評価については、昭和47年6月の閣議了解「各種公共事業における環境保全対策について」に基づき、公共事業に係る環境影響評価の実施が推進されており、また、各種法令の関係規定の整備が図られてきているが、環境影響評価を十分行うことについての国民の期待と関心は近時極めて大きいものがあり、その制度的確立に対する要請も漸次高まってきている。
 このほか、国際的な場においても、49年にOECDの環境担当閣僚会議が採択した「環境政策に関する宣言」では、環境影響評価に関する提言が重要な位置を占めており、更に、環境影響評価制度の運営について数年来の実績を持つアメリカ合衆国、スウェーデン等に加え、49年12月にはオーストラリアで法制度化が行われ、50年には、そのガイド・ラインが公表されている。
 これらの動きに見られるとおり、開発行為等が行われるに当たり、それが環境に及ぼす多様な影響を事前に予測評価することにより、環境汚染の未然防止を図ろうとする環境影響評価システムの確立を図ることは、国際的に共通した課題となっている。
(2) このような環境影響評価システムの確立には、環境影響の予測・評価のための技術手法の面と手続等制度的な面の両面がある。このうち、技術手法の面については、49年6月24日付けの中央公害対策審議会防止計画部会環境影響評価小委員会中間報告「環境影響評価の運用上の指針について」において試案が示され、各方面においても参考とされているが、このほか、大規模工業開発、港湾、公有水面埋立、電源開発等の分野でのこれまでの経験より、かなりの知見が積み上げられている。
 50年度における技術手法に関する調査研究には、第1に、環境影響評価手法向上に関する調査研究がある。これは、大気質、水質につき、その予測モデルの実証、観測の合理化、開発に係る気象、水象の変動のモデル化等を図ることを目的としたものである。
 第2は、環境影響総合解析システムの設計に関する調査である。50年度では、広域及び地域の環境評価指標について検討が行われた。
 第3は、工場騒音アセスメント基礎調査である。これは、工場団地の整備等に伴う騒音に係る環境影響の予測・評価を行う上での基礎となる調査であり、50年度には工場騒音原単位調査を行った。
 第4は、48年度から引き続いて実施している水質変化予測に関するシステム化を目的とする調査研究である。48年度においては、水の自浄作用の定量化のための基礎的調査研究を実施し、49年度においては、主として汚濁負荷のは握方法等を調査検討するとともに、それらに関連する水質汚濁指標の解析を行ったが、50年度には、自然的社会的経済的要因変化に伴うマクロ的水質変化の予測等について調査を実施した。
 第5は、空港、新幹線鉄道、高速道路、港湾建設等の公共事業に係る環境影響評価手法の開発調査である。これに関して、50年度は、運輸省においては、環境アセスメント手法開発調査委員会が48年度に提案した環境システムマトリックスの実用化、精密化を行うため、都市交通に関する調査を実施した。また、港湾等についても、環境影響評価手法の開発のための調査検討を実施した。
 第6は、工場立地に関して、「工場立地法」に基づく産業公害総合事前調査の一環として、50年度は、粉じん汚染予測手法、生態系影響調査手法等の開発を行った。
 第7に、道路、河川、住宅、都市計画等の公共事業における環境影響評価手法の開発と調査研究体系の設定を目的として、建設技術開発会議の環境アセスメント手法部会において、審議が行われている。
 その他、関係各省庁において、それぞれの所管に係る問題についての環境影響の予測手法等の開発・向上が進められた。
(3) 次に、手続等制度の面については、中央公害対策審議会環境影響評価制度専門委員会で、基礎的な検討が行われ、50年12月には、その検討結果のまとめが行われた。また、同じく、12月には中央公害対策審議会に「環境影響評価制度のあり方について」の諮問がなされた。同審議会環境影響評価部会では、上記専門委員会の検討結果のまとめを受けて、これに基づき、更に具体的な制度のあり方につき、各方面の意見、知見を聴く等検討を進めている。
 このように、50年度においても、環境影響評価の実施の推進が図られ、また、併せて、環境影響評価制度の確立に向けて検討が行われた。

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