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第3節 

3 被害救済の課題

 原因者による救済が困難な被害について採られている既存の救済措置には、救済の対象となる被害の種類、地域、救済内容等がかなり限られ、また、暫定的な措置とされているなどの問題があり、被害者の迅速かつ確実な救済を行うための何らかの方策を講ずることが今後の課題となっている。
 物的被害の救済策のあり方については、環境庁による「物的被害救済に係る費用負担等について」の報告(50年12月)及び中央公害対策審議会による「公害に関する費用負担の今後のあり方について」の答申(51年3月)が取りまとめられている。これらの報告等で示されている基本的考え方は次のとおりである。
 第1に、公害による物的被害は、被害の態様や加害の態様がそれぞれ複雑多岐にわたっているため、すべての被害に共通して適用される画一的な救済措置を講ずることは困難であり、被害の種類ごとに、それぞれの態様に応じて適切な措置により救済策を立てていくことが必要である。
 第2に、救済に要する費用の負担については、被害の原因となった汚染物質を排出した汚染者が負担するという汚染者負担の考え方を基本とすべきである。
 その具体化に当たっては民事責任を踏まえた制度を考えるべきであるが、拠出者の範囲、救済の範囲、因果関係等に関して種々の制度的な割切りを行う必要があり、その結果形成される責任は、民事責任とは必ずしも厳密には対応しない面もあるので、割切りの内容について社会的合意を得ることが必要である。
 汚染者負担の考え方を採りにくい場合には、負担の根拠について理論的に不明確な点もあるが、公費負担や汚染の結果と社会的関連性を有する民間からの拠出金による救済措置について検討しなければならないこともあろう。
 第3に、救済すべき被害の範囲及び程度は、原因者の態様、被害救済の方法、費用負担者のいかんによって異なってくる。原因者の民事責任を基礎とする場合は、その限度においてすべて補償されるべきであり、その他の拠出金による場合は、拠出の程度との相関で救済の水準が決定されることとなる。また、公費により救済を行う場合には、行政主体により政策的見地から妥当な救済水準が決定されるものである。
 以上のような考え方に基づいて当面検討を進める必要があるものとして、油濁、赤潮による漁業被害、カドミウム汚染米被害等がある。
 まず、油濁による漁業被害については、漁場油濁被害救済基金による暫定措置が採られているが、その後の制度化について検討する必要がある。
 赤潮による漁業被害については、科学的な調査を更に推進し、原因の解明に努めることが総合的な救済制度を考えていくための前提となろう。
 また、休廃止鉱山によるカドミウム汚染米被害については、農用地の機能回復、農業経営の維持等農業政策やその他の観点から、総合的に諸施策を検討していく必要がある。

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