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第1節 不況による環境汚染への影響

 第1章で見たように、最近の環境汚染は、改善しつつあるが、49年度は、我が国の経済が初めてマイナスの成長を体験した時期であり、経済活動の停滞が汚染物質排出量へ与えた影響も無視できない。
 以下硫黄酸化物、窒素酸化物及び家庭ごみについて排出量の変動要因を検討しよう。
 45〜48年度において、経済活動の拡大とともに、エネルギー消費量は年平均8%の割合で増加したが、49年度には、経済活動の停滞に伴ってエネルギー消費量は対前年度比4%の減少を見た(第2-1図参照)。
 この間、硫黄酸化物の排出量は、エネルギー消費量が48年度まで増大し続けたにもかかわらず、排出規制の強化等によって排出量は減少傾向(46〜48年度平均マイナス7%)にあり、49年度は、前年度に比べマイナス22%と大きな減少となっている。他方、窒素酸化物の排出量は、排出規制が硫黄酸化物の場合に比べ遅れて始まったため、エネルギー消費量の増大とともに、その排出量は年々増大(46〜48年度年平均約5%)を続けてきたが、49年度は、前年度に比べマイナス9%と初めて減少に転じている。
 次に、46年度以降における硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量の変化に対して、エネルギー消費量の変化及び排出規制等がどの程度に寄与したかを推計してみると第2-2図のようになる。
 硫黄酸化物の排出量について見ると、46年度から48年度までは、エネルギー消費量の増大による寄与度が年平均8%と大きかったものの排出規制の強化等による寄与度も年平均マイナス15%と大きく寄与した結果、硫黄酸化物の排出量は、年平均で7%ほど減少している。特に、49年度の硫黄酸化物の排出量は、48年度に比べマイナス22%とこれまでに比べても大きく減少しているが、この内訳を見ると、エネルギー消費量の減少による寄与が約2割、排出規制の強化等による寄与が約8割となっている。
 また、窒素酸化物の排出量について見ると、硫黄酸化物の排出規制に伴い、ナフサ、LNG、LPG等の軽質燃料が使用されるようになったことによる排出量減少への寄与はあるものの、排出規制が硫黄酸化物の場合に比べ遅れて始まったため、排出規制等による寄与度は小さく、排出量が48年度まで年平均で5%程度増加してきた。ところが、49年度になって窒素酸化物の排出量は48年度に比べマイナス9%と初めて減少に転じているが、エネルギー消費量の減少による部分が約4割と硫黄酸化物の場合に比べ大きな割合を占めており、残りの6割が排出規制等の寄与となっている。
 今後、景気の回復に伴い経済活動が拡大していけば、汚染物質の発生量は、必然的に増加していくことになるが、そのなかで、環境への汚染物質の排出量を減少させていくためには、更に、排出規制等の施策を一段と強化していくことが必要である。
 次に、家庭ごみ発生量について見よう。ごみ発生量は、高度成長に伴う個人消費の増加とともに、急速に増大してきたが、最近において、その伸びは鈍化する傾向にある。
 硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量変化の要因分析と同様の方法を用いて、ごみ発生量変化の要因を、実質家計消費支出の変化によるものと消費者が使い捨て等の生活様式等を変化させたことによるものに分けて見よう。東京都のデータによれば、第2-3図に見るように、これまでごみ発生量は10%以上の伸びを示してきたが、その要因は、実質消費支出の変化によるものが約5割、生活様式等の変化によるものが約5割となっている。しかし、49年には、ごみ発生量の伸びがゼロとなった。これは、実質個人消費支出が全く停滞したことによるほか、生活様式等の変化による影響がなかったためである。
 今後、実質消費支出の増加に伴って、ごみ発生量の増大が予測されるが、そのための所要の施策が必要となろう。

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