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第2節 

2 取締りの概況

(1) 検挙件数の増加
 49年中に全国の都道府県警察が検挙した公害事犯は第9-2-1図のとおり、総数2,856件に達し、前年の1,727件に対比すると、1,129件(65%)の増加となっている。
 これは、警察の公害事犯に対する取組みの積極化によるところが大きいが、同時に地域住民の公害問題に対する関心と警察の取締りに対する理解と協力の高まりが大きな要因となっている。


(2) 公害事犯の態様等
 49年中に検挙した公害事犯を態様別に見ると、第9-2-1表のとおりである。水質汚濁に関するもの1,326件(46.4%)及び悪臭等に関するものが1,391件(48.7%)でこの2態様で全体の95%を占めている。
 これを適用した法令別に見ると第9-2-2表のとおりで、このうち適用した件数の多い法律は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が1,819件と最も多く、次いで「河川法」322件、「水質汚濁防止」を252件の順になっている。なお、適用した法令数は45に及んでいる。


(3) 公害事犯の傾向等
 取締りの進展に伴い、企業等が社会的責任を自覚し、自主的な公害防止措置を行う等の好ましい動きも活発となった反面、一部にあっては監視を逃れるためより一層悪質な手段に走るものが見られた。
 例えば、汚水等の処理施設は設置しているが、常時その施設を使用する経費を惜しんで夜間、休日等に未処理の汚水等をタレ流したり、隠し排水ロを別に設けて未処理の汚水等を流していた事例などが各地で見られたところである。また、東京都内の産業廃棄物が遠く宮城、福島各県等にまで運搬されて、不法投棄される等産業廃棄物の不法投棄事犯がますます広域的に行われるようになっている。また産業廃棄物を排出する企業が、下請業者等に対して、取引上の地位を利用して産業廃棄物の処理を無理に押しつけたり、暴力団員が産業廃棄物の不法投棄において利得を図る等の事例が見られた。更に49年4月30日、三重県四日市市内に所在する化学工場において、液体塩素の貯蔵に際してバルブ操作を誤って、有害ガスである塩素ガスを大気中に排出させたことにより、附近の住民多数に対し、急性咽頭炎の傷害を与えた事犯を、「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律」を適用し検挙、送致したが、同法違反として初めて起訴された。

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