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第1節 

6 慢性砒素中毒症

(1) 土呂久における慢性砒素中毒症
ア 沿革
 宮崎県土呂久地区に発生した慢性砒素中毒症に関する経緯は次のとおりである。
 44年 宮崎県による県下休廃止鉱山の一斉点検
 46年11月 土呂久鉱山周辺についての環境調査及び社会医学的調査の実施
 47年7月 慢性砒素中毒症と思われる者7人が認められた旨の報告
 8月 宮崎県による医療救済措置の実施
 12月 県知事のあっせんにより、医療救済措置を受けた7人と、住友金属鉱山株式会社との間に補償問題の解決
 48年2月 救済法による地域指定
イ 認定基準
 環境庁においては、砒素による健康被害検討委員会を設けて、砒素の健康被害に関する疫学的健康調査方法、臨床的診断方法及び救済のための公害病認定条件について検討を行ったが、同委員会の中間報告に基づく認定基準は、次のようなものである。
 (認定に必要な要件)
 次の?と?の要件が必要である。ただし、?の要件がない場合であっても?の要件があればよい。
? 過去の鉱山稼動時に批鉱焙焼炉及びズリ堆積場の周辺等の砒素濃厚汚染地に居住し、三酸化砒素に対する長期にわたる暴露歴を有したこと。
? 皮膚に砒素中毒に特徴的な色素異常及び角化の多発が認められること。
? 鼻粘膜瘢痕又は鼻中隔穿孔が認められること。
ウ 現状
 48年2月の地域指定以降、救済法及び補償法によって認定された患者は、50年3月末現在40人(ほか死亡者1人)であるが、このうち15人(死亡者1人を含む。)については、49年2月と12月に知事のあっせんにより補償問題が解決している。
(2) 笹ケ谷における慢性砒素中毒症
ア 沿革
 島根県笹ケ谷地区に発生した慢性砒素中毒症に関する経緯は次のとおりである。
 45年島根県は、笹ケ谷鉱山周辺地域において砒素による環境汚染を確認
 47年7月〜11月住民健康調査の実施
 48年8月 上記調査に基づき、笹ケ谷鉱山の操業に伴って発生した三酸化砒素に暴露したことによる慢性砒素中毒症と思われる者7人、疑いのある者5人、要経       過観察者16人が認められた旨の報告
 11月 環境庁は、砒素による健康被害検討委員会を再開
 49年5月 笹ケ谷地区には、過去の鉱山稼動に伴って排出された三酸化砒素によって広範囲にわたる環境汚染があり、また、砒素濃厚汚染地域に居住する住民       の皮膚所見及び末梢神経系所見より慢性砒素中毒と考えられる患者が見いだされた旨の結論
 7月 救済法による地域指定
イ 認定基準
 この砒素による健康被害検討委員会において、それまでに得られた知見等を検討した結果、土呂久指定の際に策定した認定条件の上に新たに多発性神経炎を認定条件として加えている。
ウ 現状
 50年3月末現在、救済法によって認定された者が15人(ほか死亡者1人)おり、現在補償法によって救済措置を受けている。

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