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第7節 

2 PCB汚染

(1) 概要
 PCB汚染問題については、47年4月に設置されたPCB汚染対策推進会議及び48年6月に設置された水銀等汚染対策推進会議において決定された事項を基本として、各種の対策が実施されてきている。
(2) PCB汚染対策
ア 環境調査の実施等
 47年度のPCB汚染全国実態調査に引き続き48年度にも水銀とともにその全国環境総合調査を実施し、49年9月に取りまとめて公表した。
 調査結果の概要は、次の?から?までに述べるとおりである。
? 魚介類
 魚介類調査は、過去の調査において問題とされた20水域の3,369検体について行い、その結果に基づき魚獲の自主規制が行われている水域は第4-7-6表のとおりである。これらの水域では、引き続き定期的な調査を行うこととしている。
? 水質
 水質調査は、過去の調査において魚介類汚染が問題とされた水域及び底質調査において1ppm以上を検出した水域の208河川、28港湾、46海域、合計282水域の1,281検体について行った(第4-7-7表参照)。このうち50年2月に設定された環境基準値を超えたものは、4.3%の55検体であり、その水域は市川大門都市下水路(山梨、笛吹川水系)、庄下川(尼崎市)、合切川(徳島)、庄手川(大分)、豊平川(札幌市)等の18河川、岩国海域等4海域の22水域であった。これらの水域にあっては、その原因を明らかにし、所要の対策を講ずることが必要である。
 なお、前年度調査と比べ全般的に検出率、検出濃度とも減少しており、改善の跡が見られた。
? 底質
 底質調査は、河川258水域、港湾38水域、海域58水域合計354水域の1,789検体について行った(第4-7-8表参照)。このうち底質中のPCB含有量が暫定除去基準値(乾重量当たり10ppm)以上の水域は、51水域(河川42水域、港湾5水域、海域4水域)であり、各水域の最大測定値100ppm以上、50〜100ppm、25〜50ppm及び10〜25ppmのランク別水域数はそれぞれ6水域、8水域、11水域及び26水域であった。これらの水域においては、既に除去工事を完了したものもあるが、必要に応じて詳細な調査を行い、暫定除去基準値を超える底質を早急に除去することとしている。
 また、47年度の調査では、10,000ppmを超える地点が数か所ある等極めて高濃度の汚染があったが、これらの水域で除去等の対策は完了しているので、今回の調査では47年度のような高濃度の底質は見られなかった。
? 土壌農作物
 土壌中のPCBは、PCB取扱い工場等の周辺地域を対象とする調査ではND〜5.9ppmであり、大部分が0.1ppm以下である。また、農作物中のPCBはほとんど検出されなかった。
 今後、土壌から10ppm以上検出された地区については、詳細な調査を実施し、所要の対策についての検討を行うこととしている。
? 排出源の状況
 PCBの使用は、現在までに開放系(感圧紙、塗料、インク等)については全面的使用禁止、閉鎖系(熱交換器、加熱器、トランス、コンデンサ一等)については原則的使用禁止の法的規制措置が採られているが、現在使用中の閉鎖系の機器についてユーザーにその管理を徹底させるとともに、PCBを熱媒体として使用しているものについて代替品に転換することが指示されている。また、PCB入りの感圧紙等については、回収保管の適性化と再生紙の原料として使用しないための原料の選別が指示されている。廃家電製品についても、市町村の協力のもとにPCB入りの部品の取外しを行うとともに、その回収と適正な保管に努めており、処理技術の確立を待って処理することとしている。また、重電用トランス、コンデンサー等の廃品についても同様である。
イ PCBに係る環境基準の設定等
 PCBに係る排水基準については、既に暫定的な措置として、PCBの排出等に係る暫定的指導指針を設定し、底質の暫定的除去基準について47年度調査結果より乾重量当たり100ppmとして行政指導を行ってきたところである。
 今般、PCBに関する魚介類の暫定的規制値が定められたこと、48年度の全国環境総合調査等により環境汚染と魚介類汚染に関するデータが増加しその関係の考察が可能となったこと、分析技術の進歩と分析機器の普及に伴って低濃度の分析が可能となったこと等の科学的知見が拡大してきたため、50年2月3日には環境基準及び排水基準を設定するとともに底質の暫定除去基準も強化した。その概要は、次のとおりである。
? 環境基準
 魚介類PCB許容濃度(3ppm)及び魚介類の濃縮化から考えると環境基準値は0.0003ppm以下とすることが適当であるが、現在の分析技術水準の定量限界は0.0005ppmであるので環境基準は「検出されないこと」とした。
? 排水基準
 排水基準は排水が一般に10倍に希釈されることを考慮し、0.003ppmであることとした。ただし、故紙再生業については、施設の改善等のため猶予期間が設けられている。
? 底質の暫定除去基準
 底質の暫定除去基準は、魚介類のPCBの許容濃度と全国環境調査結果の底質中のPCB濃度のデータの統計的解析により乾重量当たり10PPmとした。

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