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第5節 

2 土壌汚染防止対策

(1) 法的規制
 このような土壌汚染に対処するため、土壌汚染を典型公害の1つとし、これに係る環境基準を設定することとするとともに、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」において、特定有害物質としてカドミウム及びその化合物並びに銅及びその化合物を指定し、特定有害物質による農用地の汚染の防止及び除去等を行っている。
 特定有害物質により汚染されている農用地については、これを農用地土壌汚染対策地域(いわゆる対策地域)に指定し、農用地土壌汚染対策計画(いわゆる対策計画)を定めることとしている。
 なお、昭和50年4月には、砒素についても特定有害物質に指定されたが、他にも有害な物質については逐次、特定有害物質として、追加指定することとしている。
(2) 土壌汚染対策調査等
 特定有害物質による農用地の汚染の実態をは握するために、46年度からカドミウムについて、更に47年度からはカドミウムのほか銅について、その汚染地域及び汚染のおそれのある地域を対象に土壌汚染対策細密調査(いわゆる細密調査)を実施している。
 48年度は、カドミウムに係る細密調査を31都道府県108地域、約10,700haについて、また、銅に係る細密調査を18県の22地域、約3,200haについて実施した(この調査は国庫補助事業のほか、都道府県単独事業としても実施している)。この調査結果の概要は、第4-5-1表に示すとおりである。対策地域の指定要件としての基準値以上のものが検出された地域は、カドミウムに係る調査では36地域(196点)、銅に係る調査では14地域(288点)であり、比較的汚染度の高い地域は、富山県神通川流域地域(カドミウム汚染、基準値以上のもの60点)と群馬県渡良瀬川流域地域(銅汚染、基準値以上のもの166点)であった(第4-5-2表参照)。また、米中のカドミウム濃度の最高値は、富山県神通川流域左岸地域の5.20ppm、土壌中の銅濃度の最高値は島根県の八束地域の809.5ppmである。
 ちなみに、49年度は、24道府県の36地域、約8,500ha(国庫補助事業分のみ)で細密調査を実施している。
 また、水銀については、最近における全国的な環境汚染問題に対処するため水銀等に係る全国環境調査が48年度に実施されたが、この調査の一環として、水銀等による土壌汚染の調査を実施した(第4-5-3表参照)。
 このほか、重金属類による農用地の汚染の全般的な状況をは握するため、原則として毎年度同じ地点で重金属類概況調査を継統して実施している。48年度の調査結果の概要は、第4-5-4表のとおりである。
 なお、汚染防止対策に資するため、農用地の土壌が汚染されている地域又は汚染のおそれが著しいと認められる地域において、現地改善対策試験ほ場を設置し、客土、土壌改良等の効果について調査試験を実施した。また、鉱山等からの排水に含まれるカドミウム等の特定有害物質による農用地の土壌汚染地域の被害防止対策の基準を検討するため、青森県坪川地区等2地区に対策基準ほを設け、調査を実施した。


(3) 土壌汚染対策事業
 46〜48年度における細密調査等により指定要件の基準値以上のカドミウム又は銅が検出された地域については、対策地域の指定を行っており、50年1月25日までに福島県の日曹金属(株)会津製錬所周辺地域等21地域が指定され、指定総農用地面積は水田約1,960ha、畑約20haとなっている(第4-5-5表参照)。
 対策地域に指定された地域のうち対策計画が策定されたものは、群馬県の碓氷川流域地域等7地域であるが(第4-5-5表参照)、これらの地域においては排土、客土、水源転換等の公害防除特別土地改良事業等を実施している。
 なお、カドミウム1.Oppm以上を含む米が生産された地域においては、「食品衛生法」に基づく成分規格に適合しない米が生産されることを防止するため、土地利用、非食用植物の作付け等の指導を図るとともに、水稲を栽培する場合についても水稲の品種の変更、水管理の改善、土壌の改良等適切な措置を採るよう指導が行われている。

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