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第3節 

1 地盤沈下の現況

 我が国の地盤沈下地域は、第4-3-1図に示すとおり、全国的に分布している。これらの地域における沈下の状況は、参考資料3に示すとおりであり、地域によって沈下の程度及びその被害の状況は大きく異なっている。すなわち、これは、地形、地質、土地利用、地盤沈下の原因となっている地下水採取の実態等が地域ごとに大きく異るためであり、これらの要因が組み合わされた結果、地盤沈下は極めて地域的特性の強い公害となっている。
 地盤沈下の歴古は古く、東京都低地部のように過去半世紀にわたって沈下が継続している地域もあるので、その調査、研究も進み、今日では地盤沈下の原因は地下水(一般の地下水のほか、水溶性天然ガスを溶存する地下水及び温泉を含む。)の採取にあること、また、地盤沈下の防止のためには、強力な地下水採取規制措置によって地下水採取量の抑制を図る必要があることが、広く一般に認識されるようになっている。その結果、大阪市、尼崎市等のように地下水採取規制及びこれに伴う水源転換の進ちょくにより、かつて著しかった地盤沈下がほぼ停止した地域も現れているが、その反面、首都圏南部地域をはじめ多数の地域において、相当程度の地盤沈下が現に進行しつつある。特に、最近数年間の傾向として、地方都市においても多く地盤沈下が発生し、そのうちの一部地域においては急速に沈下が進み、建造物、港湾施設、農地及び農業施設等に著しい被害が生じていることは看過できない。代表的な地域の地盤沈下の経年変化は、第4-3-2図に示すとおりである。
 以上のような最近の地盤沈下の状況にかんがみれば、地盤沈下の防止のため、地下水採取規制を一層強力に実施する必要があることは明らであるが、現在地下水が貴重な資源として各種の用途に利用され、全国的な水需要の増大に伴って、表流水への転換が容易ではなくなっていることも事実であり、ここに地盤沈下対策を推進していく上での問題があるといえよう。地下水を中心とする我が国の水利用の実態を推計すれば、おおむね第4-3-3図に示すとおりである。

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