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第1節 

3 航空機・新幹線騒音の現況と対策

(1) 現況
 航空機騒音、特にジェット機の騒音は、騒音レベルが高く、また、広範囲に及ぶため、飛行場周辺においては生活環境上の大きな問題となっている。このため大阪国際空港周辺住民は、44年、国を相手取って民事訴訟を起こし、49年2月27日には大阪地方裁判所において、原告の請求に対し、?午後10時から翌朝午前7時までの間における航空機の離着陸の原則的禁止及び?原告住民1人につき4〜50万円の損害賠償を認める判決があった。なお、原告、被告ともこの判決を不満として控訴し、現在、大阪高等裁判所において係争中である。
 また、新幹線鉄道騒音は線路構造によって異なるが、一般に騒音レベルが高く、沿線における騒音が社会的な問題となっている。新幹線鉄道についても49年3月に、騒音及び振動による被害に関して、名古屋市の新幹線沿線住民によって国鉄を相手取った民事訴訟が起こされ、現在、名古屋地方裁判所で審理中である。
(2) 環境基準の設定
 航空機騒音については、音源対策、土地利用対策等の総合的な施策の目標となる環境基準が48年12月27日に第4-1-5表のような内容で設定されており、現在、都道府県において地域類型の当てはめ作業が進められているところである。
 また、新幹線鉄道騒音に係る環境基準については.48年8月から中央公害対策審議会騒音振動部会特殊騒音専門委員会において基準値、達成期間等について審議が行われていたが、その結論がまとまり、50年3月29日同部会に報告された。
 なお、同部会では同専門委員会報告を基に審議中であり、近く答申が得られる予定である。


(3) 対策
 航空機騒音対策は、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」及び「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」を中心に進められている。公共用飛行場については、特定の飛行場周辺において、従来から行われてきた学校、病院等の防音工事の助成、共同利用施設の整備の助成、建物等の移転の補償、土地の買取り、テレビ受信障害対策等の諸施策のほかに、49年3月の法改正によって、49年度から新たに、民家防音工事、騒音の特に著しい地域の緑地化等の施策が講じられることとなったほか、大阪国際空港周辺の騒音対策等を実施するための主体として、大阪国際空港周辺整備機構が設立された。また、騒音源対策として、ジェット機の改修や低騒音大型機の導入による低騒音化、運航方式の改善等も推進されている。
 なお、公共用飛行場周辺地域における土地利用のあり方についても、その法制化を含めて検討が行われれているところである。
 自衛隊又は駐留米軍の航空機の騒音対策としては、学校、病院等の防音工事の助成、防衛施設の運用による騒音障害の緩和に資するための施設の整備に対する助成、特定の飛行場周辺の建物等の移転補償、土地の買取り、テレビ受信料の減免措置に対する補助、騒音用電話機設置に対する補助等の施策を講じているほか、音源対策として、自衛隊又は駐留米軍の航空機の運用に当たって、消音装置の使用、飛行方法の規制等についての配慮も行っている。しかし、これら従来の対策だけでは防衛施設(飛行場及び対地射爆撃場)周辺における騒音問題の解決には不十分であることから、「防衛施設周辺の整備等に関する法律」が廃止され、舵空機騒音に係る飛行場等周辺の環境改善施策として、新たに飛行場等の周辺の住宅防音工事の助成、緩衝緑地帯の整備等の施策を盛り込んだ前記「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」が制定された(49年5月31日成立)。
 また、新幹線鉄道騒音対策としては、線路構造物、軌道、車両の改良等の音源対策を行っているほか、障害防止対策として、民家の騒音防止工事の助成及び移転補償が実施に移されている。

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