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第5節 

2 瀬戸内海の汚濁防止対策

 瀬戸内海の水質汚濁防止対策については、環境基準設定の促進、排水規制の強化、特定施設の設置等の規制、下水道整備及び廃油処理施設整備等を鋭意進めているところであり、その概要は次のとおりである。
(1) 環境基準の水域類型の指定と上乗せ排水基準の設定
 環境基準の水域類型の既指定水域は、72水域である。また、上乗せ排水基準については、環境基準の達成を図るため設定されるほか、環境庁が「瀬戸内海環境保全臨時措置法」に基づき49年2月1日に瀬戸内海関係11府県に対し瀬戸内海関係公共用水域に排出される産業系排水に係るCOD汚濁負荷量の半減計画により第3-5-6表のとおり府県別限度量の割当てを行ったことに伴い51年11月までにその限度量以下に発生負荷量を抑えるため設定されている。なおこの措置は、49年末までに関係11府県の瀬戸内海関係公共用水域のすべてについて終了している。


(2) 特定施設の設置等に関する許可制の導入
 特定施設の設置及び変更については、「水質汚濁防止法」において届出制が採られているが、瀬戸内海関係11府県では、「瀬戸内海環境保全臨時措置法」に基づいて府県知事の許可制が採られ、環境影響事前評価が義務付けられるとともに、許可をするに当たり公衆の縦覧、利害関係者の意見書の提出等地域住民の意見を反映させる道が開かれている。
(3) 埋立ての免許、承認に当たっての基本方針の決定
 環境庁は、「瀬戸内海環境保全臨時措置法」に基づき、49年6月18日に、瀬戸内海における埋立てが既に悪化している瀬戸内海の環境に影響を及ぼすものであるとの認識に立ち、その一層の悪化を防止するため、瀬戸内海での埋立ての免許又は承認をするに当たり関係府県知事の配慮すべき基本方針を通達した。その内容は、次の3項目である。
ア 海域保全・自然環境保全及び水産資源保全上の配慮事項
イ 極力埋立てを避けるべき海域の指定
ウ 留意事項に適合しない埋立てをできるだけ避けるよう配慮すべき海域の指定
(4) 公害防止計画の策定の推進
 公害対策を進めるために公害防止計画を策定することとしているが、既にその計画の承認がなされた地域は、水島(第1次及び改定)、大阪(第2次)、兵庫県東部、北九州、大分(第3次)、播磨南部、大竹・岩国(第4次)、神戸、備後、周南、東予(第5次)の11地域であり、現在計画策定中の地域でに瀬戸内海の20港34か所において廃油処理施設が整備された。
(5) 下水道整備の促進
 49年度は、下水道整備5箇年計画に基づき、瀬戸内海関係11府県における公共下水道、流域下水道及び特定公共下水道について総事業費約1,300億円(全国総事業費約4,700億円の約28%)を投資し、下水道の重点的な整備を図った。
(6) 廃油処理施設の整備
 船舶廃油には、油性バラスト水、タンク洗浄水、ビルジ等があるが、42年度以降現在までに瀬戸内海の20港34か所において廃油処理施設が整備された。
(7) 排水の水質の監視・取締り
 瀬戸内海関係11府県及び政令市全域における「水質汚濁防止法」上の特定事業場数は、48年度末現在で30,492事業場(「瀬戸内海環境保全臨時措置法」に係るもの3,273事業場)である。48年度の水質の監視・取締状況は、立入検査が12,969件、行政指導が9,096件、特定施設に関する改善命令が392件、特定施設からの排出水の排出の一時停止命令が58件となっている。
(8) 水質汚濁の調査・監視・取締り等
 環境庁は、瀬戸内海が地形の変化に富み、潮流が複雑なパターンを示し、その汚濁も複雑であるため、47年より毎年水質及び底質の調査を行っており、また環境庁、水産庁及び海上保安庁は、相互協力の下に、46年から48年までの間、赤潮発生予察技術、赤潮による水産被害の防除・抑制技術、赤潮多発海域等汚染海域の海洋環境等の調査研究を行った。また、49年度は、水島における重油流出事故に対処し、重油流出事故関係環境影響総合調査を急きょ追加して行うこととし、環境庁、水産庁、海上保安庁、建設省、厚生省および通商産業省が共同してそれぞれの分野での調査研究を併せ行った。
 海上保安庁は、瀬戸内海が海洋汚染の多発する海域であるため監視重点海域として、巡視船艇及び航空機を配備して、緊密な連携監視体制を採っている。なお海域別汚染発生確認件数は、第3-4-1表に示したとおりである。
 このほか、瀬戸内海におけるし尿の海洋投棄が48年4月1日以降全面的に禁止され、水銀、PCB等に汚染された兵庫県高砂本港、北九州市洞海湾、山口県岩国市の地先海域等における汚でいのしゅんせつ作業が行われたほか、水質の監視測定施設の整備、水質監視船の建造等が行われた。

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