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第4節 

2 海洋汚染防止対策

(1) 規制措置の強化
 船舶の通常活動により生ずる木くず及び最大とう載人員100人以上の船舶から海洋投入されるふん尿について、49年6月から、前者にあっては最大径15cm以下に破砕するか切断して所定海域に排出することとし、後者にあっては伊勢湾、瀬戸内海等の一定海域には所定の排出基準により排出することとする規制が全面適用されることとなった。
 また、48年11月の「海洋汚染防止法」の一部改正で制度化された排出油防除資材の備付け義務について、その具体的な基準が49年7月に制定、施行され、排出油の防除体制が一層整備されることとなった。
(2) 監視取締体制の強化等
 海上保安庁は、海洋汚染の防止を図るため、49年度に東京湾から瀬戸内海に至る海域を管轄する管区海上保安本部の海上公害関係の組織の改組、人員の増員及び横浜、名古屋、神戸等主要な海上保安部の取締要員の増員を行うとともに、福岡航空基地を新設した。また、汚染多発海域を管轄する海上保安部署等に対し、性能の優れた巡視船艇、航空機を優先的に配備するとともに、赤外線利用による油排出夜間監視装置、公害監視取締艇、公害監視用VTR等をはじめとする各種機器の整備を図るなど監視取締体制を一層充実強化した。この結果、49年には、第3-4-2表のとおり48年の約1.02倍に及ぶ1,860件の海上公害関係法令違反事件を送致した。このうち、油及び廃棄物の不法排出等の事犯は1,134件であった。
 海上保安庁において、海洋環境保全のための調査を実施しており、49年度には48年度に引き続き日本周辺海域における海水又は海底堆積物中の油分、COD、PCB及び重金属の調査並びに廃油ボールの漂流、漂着実態の調査を実施するとともに、49年度に産業廃棄物の漏洩及びその拡散機構について廃棄物投棄海域における深層海流の測定を実施した。


(3) 海洋汚染の未然防止対策
ア 廃油処理施設の整備
 船舶内において生ずる油性バラスト水等大量の廃油を処理する廃油処理施設は、47年度までに整備を完了し、ビルジ等少量の廃油を処理する小規模な施設及び排水基準の強化に伴い改良が必要になった施設は、49年度に、48年度に引き続き整備を行った。操業中の廃油処理施設は、50年1月5日現在、港湾管理者、民間事業者等の管理するものを合わせて57港91か所である。
イ 船舶による海洋汚染防止対策
 タンカーにおいて生ずる廃油のうち、油性バラスト水及びタンク洗浄水についてはロード・オン・トップ方式、バラストタンク分離方式及び陸上廃油処理施設により、ビルジについては油水分離装置等により、それぞれ処理している。なお、タンカーの座礁、衝突等の事故による油の流出量を制限するため、タンクサイズの規制が実施されている。
 また、船舶で発生する廃棄物については、船舶内において処理するための汚物処理装置等が積極的に採用されている。
(4) 海洋汚染防除対策
ア 港湾環境保全対策
 港湾公害防止対策事業として、49年度に事業費8,976百万円(国費1,563百万円、事業者負担5,850百万円)をもって、東京港、四日市港、大牟田港等16港の汚でいしゅんせつ事業を実施した。更に、事業費11,422百万円(国費2,904百万円)をもって、東京港、大阪港等17港において廃棄物埋立護岸及び港湾等において発生する海洋性廃棄物を処理するための海洋性廃棄物処理施設の整備を実施した。
 また、49年度より新たに、事業費342百万円(国費94百万円)をもって、千葉港、四日市港等23港において港湾区域内の清掃のための清掃船の建造及び港湾区域内にある持主不明の沈廃船の処理を実施した。
イ ー般海域の環境整備事業
 運輸省は、49年度に、48年度に建造した油回収船及びごみ清掃船を用い、車京湾及び大阪湾の浮遊油の回収並びに瀬戸内海の浮遊ごみの清掃を実施するとともに、油回収船1隻を建造した。
 なお、倉敷市の三菱石油水島製油所においてC重油が49年12月18日大量に流出し海面に拡散した事故に際し、海上保安庁において応急措置を講じるとともに、関係者と協力しつつ大規模な流出油の回収・処理等を実施した。
 また、建設省は、大阪湾に捨てられた産業廃棄物入りのドラムかんの回収について補助し、海底の浄化を図った。
ウ 海洋汚染防除体制の整備
 海洋汚染が発生した場合に効果的に対処するため、海上保安庁において49年度に汚染防除要員等の増員並びに油回収装置等の防除用資器材及びオイルフェンス展張船の整備等海洋汚染防除体制の充実強化に努めた。なお、オイルフェンス等については、43年度から整備してきている。
 従来から、全国の石油コンビナート所在地等64か所に流出油災害対策協議会等を設置し、官民の協力により大量の油の流出事故に備えているが、更に同協議会等の機能を強化するとともに、油防除資器材の備蓄整備及び官民一体となった訓練の実施等を推進した。
 防除体制の一層の充実強化のために必要な油防除用資器材の開発及び油処理システムの研究を推進するため、海上保安庁において48年度から3か年計画で、海洋における油防除技術の開発に関する研究及び油処理剤の海洋環境に与える影響の研究を実施している。

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