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第2節 

4 漁業被害

 水質汚濁による漁業被害は、近年、件数及び被害額ともに増加し、全国的に多種多様な形で発生している。その原因としては、水域への産業排水及び都市排水の流入、船舶からの廃油等の投棄、タンカー等の衝突又は座礁による油の流出、土木工事に伴う土砂の流入等のほか、長年にわたり汚染され、蓄積されてきた底質を挙げることができる。
 特に、近年、瀬戸内海、伊勢湾、東京湾等において船舶等による油流出事故が多発し、養殖を中心に多大の被害を発生させている。また、沿岸の工場又は事業場からの油の流出による漁業被害も問題となっており、特に、49年12月に発生した水島の重油流出事故は、重要な漁場である瀬戸内海を広範囲にわたって汚染し、かつてない漁業被害となった。
 このような漁業被害の態様は、
? 直接的操業不能又は操業能率低下による漁獲の減少
? 水産生物の死滅、逃避、生育不良
? 飼料生物の減少、産卵生育場の荒廃
? 重金属、PCB等の蓄積、油等による着臭、その他奇形魚の発生等による漁獲物の販売不能及び商品価値の低下
? 漁船漁具、養殖施設等の破損、腐しょく、汚染等種々のものがある。
 48年度において発生した水質汚濁による突発的漁業被害は、都道府県の報告によると、発生件数が313件、被害額が4,105百万円(被害額不明88件)であり、44年度に比較して被害件数が約3倍、被害額が約4倍に増加している。
 47年度に大発生した赤潮による被害は、48年度に減少したものの、依然として各地で養殖等に被害を与えており、漁業被害の相当な部分を占めている。
 なお、48年に大きな社会不安を引き起こした水銀及びPCBによる魚介類の汚染については、48年度の水銀、PCB等による魚介類汚染状況調査の結果等により汚染されていることが明らかとなった水銀13水域及びPCB14水域において、既に水域及び魚種を決め、漁獲の自主規制及び食事指導が行われている。

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