我が国においては長年月にわたる金属鉱山における鉱物の採掘の結果、鉱山に坑道、捨石又は鉱さいの集積場等のいわゆる蓄積鉱害源が残存しており、そこから排出されるカドミウム、銅等の有害物質の環境への蓄積が大きな社会問題となっている。
これら金属鉱山等によるいわゆる蓄積公害問題を解決し、国民の健康の保護と生活環境の保全を図るため、通商産業省においては次のような施策を講じることとしている。
(1) 金属鉱物等の採掘及びこれに付属する選鉱、製練その他の事業の用に供される坑道及び捨石又は鉱さいの集積場の使用の終了後における鉱害を防止するための事業の確実な実施を図るため、鉱害防止積立金の制度を設けるとともに使用済みのこれらの施設について鉱害を防止するための事業を計画的に実施させるため必要な措置を講ずることにより、鉱山保安法とあいまって、金属鉱業等による鉱害を防止し、もって国民の健康の保護及び生活環境の保全に寄与することを目的として48年度に金属鉱業等鉱害対策特別措置法を制定、施行した。49年度においては本法の施行のための監督指導を更に強力に実施する。
また、金属鉱業事業団が、鉱害防止積立金の管理、鉱害防止事業に必要な資金の貸付けと債務保証及び鉱害防止工事についての調査及び指導等の鉱害防止に関する事務を総合的に実施する。
(2) 金属鉱山等における鉱害問題の緊急性にかんがみ、46年度から鉱害防止義務者が不存在又は無資力である鉱山を対象として、地方公共団体が行う鉱害防止工事に対し、国が費用の3分の2を補助しようとする休廃止鉱山鉱害防止工事費補助金制度を発足させているが、49年度においては、補助事業規模を大幅に拡大することとしている。また、従来、坑廃水の処理は補助事業の対象とされていなかったが、鉱害防止義務者が不存在等の休廃止鉱山から排出されるカドミウム等有害物質を含む坑廃水についてそれを放置しておくことはできないので、補助事業対象に追加する。更に、本補助事業により実施した施設の維持管理の事業についても補助対象とする。
(3) 休廃止鉱山全体の実態を早急には握するため、48年度から地域的事情に詳しい地方公共団体に休廃止鉱山の調査を委託しているが、49年度は、廃止鉱山を中心として実施することとする。
(4) 鉱業の実施に伴う長年月にわたる重金属の蓄積等による環境汚染が社会的問題になっていることにかんがみ、蓄積鉱害源対策、蓄積公害防除対策等この問題の早期解決のための施策に関して総合的に調査、検討を行う。
(5) 休廃止鉱山における鉱害防止対策の一環として、坑廃水処理の技術等を含めて、抜本的かつ総合的な坑廃水対策を検討することとする。