1 公害健康被害補償法制定の経緯
公害健康被害者の救済については、第1節149/sb2.5.1>に述べたとおり、既に「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」があり、また、47年にはいわゆる公害に係る無過失責任法が制定され、民事上の見地からも被害者救済が行われることとなったが、公害健康被害救済特別措置法においては、逸失利益に対する補償がない等給付の内容が限定されているという問題があり、また、いわゆる無過失責任法においては、民事訴訟という手段により損害賠償を求めるものであるために、その解決にはかなりの労力と時日を要するという問題があって、被害者の救済に万全を期するとはいい難い現状にあった。特に、原因者が不特定多数で、民事的解決にゆだねることが極めて困難とみられる都市や工業地域における大気の汚染による健康被害者の救済の問題は、当面速やかな解決を必要とする課題となっていたといえよう。
このような事情を背景とし、47年4月17日には、公害健康被害補償制度のあり方について、環境庁長官から中央公害対策審議会に対し諮問がなされ、同審議会から48年4月5日に答申があった。この答申を受けて、環境庁においては直ちに法律の立案作業に着手し、6月19日に国会提出の運びとなった。
国会においては、公聴会や参考人の意見陳述を行う等精力的な審議が行われ、衆議院において若干の修正が行われたうえで、9月26日に可決成立した。