5 慢性砒素中毒症
(1) 経緯
宮崎県は、44年から公害の未然防止の観点から県下における休廃止鉱山の一せい点検を実施した。このなかで、土呂久鉱山は、要監視鉱山とされ、通商産業省福岡鉱山保安監督局と協議しつつ、調査及び環境汚染源の対策が講じられてきたが、住民の不安に対処するため、46年11月から所要の環境調査を行うとともに調査専門委員会を発足させ、土呂久地区の社会医学的調査を実施した。
この調査の結果、土呂久鉱山の操業に伴って発生した三酸化砒素に暴露したことによる慢性砒素中毒と思われる皮膚所見が地元住民7人に認められた。
(2) 救済
環境庁においては、土呂久鉱山その他において砒素による健康被害が疑われたため島根県等関係県に助成し、休廃止鉱山周辺住民の健康調査を行うとともに「砒素による健康被害検討委員会」を発足させ、砒素の健康被害に関する疫学的健康調査方法、臨床的診断方法及び救済のための公害病認定条件について検討を行った。48年1月「砒素の環境汚染による健康被害者の認定条件等について」同委員会から中間報告があり、これを受けて、48年2月救済法に基づき、慢性砒素中毒症の救済地域として宮崎県西臼杵郡高千穂町土呂久地区を指定した。
宮崎県では、土呂久地区の社会医学的調査により砒素中毒症と診断された患者7人につき47年8月から県の救済要綱による救済を行っていたが、同年12月28日知事のあっせんのもとに会社との間に補償協定が成立した。
また、48年2月の地域指定に伴う公害被害者認定審査会の設置以降認定された患者は、49年2月現在5人であるが、この5人についても同年2月2日会社との間に補償協定が成立した。
宮崎県においては、48年3月から247人を対象に再度の健康調査を行い、万全を期すこととしていたが、二次検診の段階で認定申請を指導した者13人について49年2月28日付けで救済法に基づく認定を行った。