2 PCB汚染
(1) 概要
PCB汚染問題については、47年4月に設置された「PCB汚染対策推進会議」及び48年6月に設置された「水銀等汚染対策推進会議」において決定された事項を基本として、各種の対策が実施されてきている。
(2) PCB汚染対策
ア 生産、輸入、使用及び回収処理
? 生産、輸入及び使用規制
PCB及びPCB使用製品の生産、輸入及び使用規制について通商産業省では以下のような指導を行ってきている。
PCBの生産については、三菱モンサント化成(株)は47年3月、鐘淵化学(株)は同年6月生産を中止し、また両社とも同年6月末をもって販売を中止した。
PCB使用製品のうち、開放系製品については、感圧紙について46年2月末、その他の製品について46年末までに生産中止をするよう指導した。
閉鎖系製品のうち、熱媒体については、まず、47年6月末までに回収に万全を期することができないものについては、その使用を中止するよう指導した。更に48年12月末までに代替品へ転換するように指導し、ほぼ全事業所が代替品への転換を終了している。
また、コンデンサー、トランス等の電気機械器具については、その生産は新幹線用トランスを除いて47年中に中止されていたが、新幹線用トランスについても、代替品の技術の開発が完了したのを契機に、48年9月以降の発注品から生産を中止している。現在、使用されているものについては、その廃棄の際に回収に万全を図ることとしている。
PCB使用機器の輸入については、輸入業者に対し47年9月1日以降原則として輸入を中止させるとともにPCB使用機器をやむを得ず輸入せざるを得ない場合は、当該機器の最終ユーザーと協力し、両者一体となって、当該機器の廃棄の際のPCB回収及び処理に万全を期しうるような体制をとるよう指導した。
? 回収処理
液状PCBの回収状況は、48年12月現在、鐘淵化学工業(株)高砂工場5,297トン、三菱モンサント化成(株)四日市工場917トンで合計6,214トンが回収されている。これらの回収PCBは、現在貯蔵タンク中に保管されており、今後は、県の指導をまって焼却処分される予定である。
感圧紙については、48年12月末現在、紙量で感圧紙メーカー4社において1,300トン、官公庁において1,100トンを回収保管している。その処理については、メーカー4社及び工業技術院の試験研究所で処理技術の開発を行っており、その結果を待って、二次公害を生じないよう処理することとしている。
PCB入りコンデンサーが部品として使用されている家庭電機製品については、廃棄の際に汚染源になることも考えられるので、PCB入りコンデンサー使用の家庭電機製品の型式を明らかにして、自治体が廃棄物を収集する際に、当該家電製品を分別し、メーカーが部品を取り外して、厳重に保管する体制が確立されている。
また、PCBが使用されている重電機用のトランスのうち、耐用年数が過ぎたものの収集及び処理を適正に行うため、48年8月に(財)電機ピーシービー処理協会を発足させ、トランスの使用実態調査、処理技術の開発、処理工場の建設及びトランスの収集処理計画の作成等の準備を行っており、51年から収集処理事業を実施することとしている。
イ PCB汚染の実態調査の実施
? 水質及び底質のPCB汚染実態調査
47年のPCB汚染全国実態調査の結果、水質に0.01ppmを超えるPCBの汚染が認められた20の公共用水域については、これに流入するPCB取扱い工場及び故紙再生工場の排出水の再点検を実施し、必要に応じ工場内排水溝等の清掃、PCB使用機器の転換、故紙の選別の徹底等の措置が講じられた。
また、100ppm(乾でいにつき)以上のPCB汚染が認められた29の公共用水域のうち26水域については直ちに汚染範囲等を明らかにするための詳細調査を行い、「PCB汚染底質除去対策暫定技術指針」に基づきしゅんせつ等の除去対策を講じたが、残り2水域については現在除去事業を実施中であり、他の1水域についても除去事業を計画中である。
更に100ppm未満の汚染底質については現在、生物濃縮等を考慮した除去基準の設定を検討している。
? 魚介類のPCB汚染実態調査
47年5月から12月にかけて行われた全国実態調査の結果、早急に精密調査を実施する必要があるとされた14水域について、水産庁が48年2月から5月にかけて実態調査を行った。
その結果は、第4-8-2表のとおりであり、暫定的規制値を超える検体が20%を超えた魚種が発見された8水域については、小区域及び魚種を限定して漁獲自主規制措置をとるよう指導した。また、通商産業省においては、これら8水域に係るPCB取扱事業所について、PCBの使用状況に関する立入り調査、事情聴取及びアンケート調査を実施した。
更に、全国的なPCBの使用状況をは握するため、全国のPCB取扱事業所についても同様の調査を実施した。
なお、現在、これらの調査の補完調査を実施しているところである。
? 魚介類多食者のPCB摂取量等実態調査
厚生省はPCB汚染地域と考えられる7県(千葉県、三重県、滋賀県、兵庫県、広島県、香川県及び大分県)と対照地域として島根県を選び、48年2月に魚介類多食者のPCB体内取込み量、健康状況等についてその実態のは握調査を行った。その結果の要約は次のとおりである。
() PCBの体内取込み推定量は、食品衛生調査会が47年8月に答申した成人1人1日当たりのPCBの暫定的摂取許容量250μgを超えていたものは、895例中1例であった。したがって、現段階においては魚介類の多食地域においても、特に問題はないものと考えられる。
() 血液中のPCB濃度については、PCB汚染地域が対照地域として選んだ島根県に比較して高い傾向を示している。
() PCBによる健康に対する影響の有無については、血液中PCB濃度と皮膚粘膜症状との間には相関が認められなかったほか、その他の所見についても関連がなかったことから、現段階においては、PCBによる健康障害は認められず、この程度の血液中PCB濃度では健康に影響はないものと判断される。
ウ PCBの人体影響等に関する調査研究
厚生省においては、PCBの催奇形性、発ガン性等の慢性影響、胎盤、母乳を通しての母子間の移行蓄積及び年齢階層等に対応したPCBの体内分布に関する調査研究を行った。また、労働者においては、PCBの体内蓄積量と血中濃度との相関関係に関する調査研究を行った。
エ 漁業者等の被害救済対策の実施
水銀等汚染対策推進会議の決定等に基づき、水銀と同様にPCBによる魚介類の汚染に係る被害漁業者等に対しても緊急融資措置が講じられた。