2 農薬汚染防止対策
農薬取締法の規定により、国内で販売される農薬はすべて登録をうけなければならないこととされている。登録については、農薬による汚染を未然に防止する見地から登録申請される農薬の作物残留性及び水質汚濁性について審査することとしており、審査の基準となる「農薬の登録保留の基準」を設定して、この基準に適合する農薬について登録を行っている。このうち作物残留性に係る基準は、厚生省が食品、添加物等の規格基準として定める農薬の残留基準によっているが、その基準が定められていない場合には環境庁長官が定める基準によることとなっている。
農薬に係る食品、添加物等の規格基準は、これまで29食品に係る18農薬について定められていたが、48年12月に新たに14食品(おうとう、すいか、西洋なし、アスパラガス、こまつな、セロリー、はなやさい等)を加えた43食品を対象として4農薬(ジメトエート、キャプタン、PAP、DDVP)を加えた22農薬について定められた。49年1月には、これに対応する「農薬残留に関する安全使用基準」も定められた。
また、環境庁長官の定める基準については、キノキサリン等21農薬について定めて告示し、これに対応する適正な使用方法を定めたところである。
農薬の使用規制については、現に使用されている農薬のうち、農作物又は土壌への残留性があり、定められた方法によらないで使用されるとき農作物又は土壌を汚染し、これが原因となって人畜に被害を生じさせるおそれのある農薬を作物残留性農薬又は土壌残留性農薬に指定するとともにその使用基準を定めて使用方法の規制をしており、また水質汚濁性があり、水産動植物や人畜に被害を生じさせるおそれのある農薬を水質汚濁性農薬に指定するとともに地域を限ってその使用の規制を行うこととしている。
一方、水産動物に強い毒性を示すCVP、トリアジン、PCP等54種類の農薬については「水産動物の被害の防止に関する安全使用基準」を定め、被害の未然防止に努めている。指定農薬及びその他の規制を行った農薬は、第4-7-1表のとおりである。
なお、人体への蓄積が問題となっていた有機水銀剤については、48年10月に種子消毒用の銘柄についても登録が取り下げられた結果、全面的に姿を消すことになった。
これらの農薬の使用規制等の措置によって第4-7-2表及び第4-7-3表に示すとおり、全体として毒性の強い農薬の使用率が低下し、また、残留性の高い有機塩素系殺虫剤も著しく減少しており、毒性及び残留性の低い農薬への移行が顕著となっている。