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第7節 

1 農薬汚染の現況

 戦後における農薬の生産の推移をみると、40年代前半までの伸びもそれ以後は頭打ちになっている。農薬取締法等による使用規制の強化、米の生産調整の影響、病害虫の発生が少なかったこと等に加えて農家が農薬の使用に対して慎重な態度を示すようになったことも無視できない。更に、毒性あるいは残留性の強い農薬は、その種類も生産量も著しく減少している。
 BHC、DDT、アルドリンに代表される有機塩素剤もその一例である。これらの農薬は食品や環境中に長期間残留し、国民の健康や自然環境の保全に悪影響を及ぼすおそれがあるので、46年以降使用禁止を含む厳重な使用規制を受けている。
 この結果、46年頃まで散見された農薬残留基準を超えたディルドリン、DDT等を含有する農作物、厚生省が定めた暫定許容基準を超えたβ−BHC、ディルドリン、DDTを含有する牛乳の流通は、最近報告されなくなった。また、BHC、ディルドリン等による農用地の汚染も、最近特に問題となったことはない。
 しかし、瀬戸内海沿岸において47〜48年に捕獲した野鳥、特に海浜に生息する肉食性の鳥類にBHC、ディルドリン、DDTが高い割合で検出されたことは、これらの有機塩素系農薬の環境における残留がまだ解消していないことを示している。
 更に、有機塩素系以外の農薬についても、食品を通して人体に蓄積し、慢性毒性を及ぼすおそれが考えられ、水産動植物の汚染等生活環境への影響も考えられる等、農薬汚染問題は複雑かつ多様であり、農薬についての適正な安全評価が要求されている。

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