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第6節 

2 土壌汚染防止対策

(1) 法的規制
 このような土壌汚染に対処するため「土壌の汚染」を公害対策基本法において典型公害の一つとし、これに係る環境基準を設定することとするとともに特定有害物質による農用地の汚染の防止及び除去等を行うため「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」(以下「土壌汚染防止法」という。)が制定され、現在までにカドミウム及びその化合物並びに銅及びその化合物を特定有害物質として指定している。
 これらの有害物質により汚染されている農用地については、これを農用地土壌汚染対策地域(以下「対策地域」という。)に指定し、農用地土壌汚染対策計画(以下「対策計画」という。)を定めることとしているが、その指定要件はカドミウム及びその化合物については、米に含まれるカドミウムの濃度が1.0ppm以上であると認められる地域及びそのおそれが著しい地域であること、また、銅及びその化合物については、農用地(田に限る。)の土壌に含まれる銅の濃度が125ppm以上であると認められる地域であることである。
 なお、このほかの物質についても逐次、特定有害物質として、追加指定することとしている。
(2) 土壌汚染対策調査等
 特定有害物質による農用地の汚染の実態をは握するために、46年度からカドミウムによる汚染地域及び汚染のおそれがある地域について、更に47年度からはカドミウムのほか銅による汚染地域及び汚染のおそれのある地域についても土壌汚染防止対策細密調査(以下「細密調査」という。)を実施している。
 47年度は、カドミウムに係る細密調査を27都道府県の76地域、約9,600ヘクタールについて、また、銅にかかる細密調査を7県の8地域、約1,100ヘクタールについて実施した(この調査は国庫補助事業のほか、都道府県単独事業としても実施している)。
 この調査結果の概要は、第4-6-1表に示すとおりであり、米中のカドミウム濃度の最高値は、群馬県碓氷川流域地域の4.02ppm、土壌中の銅濃度の最高値は、静岡県南伊豆地域の541.6ppmとなっている。また、対策地域の指定要件としての基準値以上のものが検出された地域は、カドミウムに係る調査では18地域(96検体)、銅に係る調査では7地域(122検体)であり、比較的汚染度の高い地域は群馬県碓氷川流域(カドミウム汚染;基準値以上のもの27検体)と群馬県渡良瀬川流域(銅汚染;基準値以上のもの94検体)であった(第4-6-2表参照)。
 なお、48年度は23県の26地域、約5,000ヘクタール(国庫補助事業分のみ)で細密調査を実施した。
 カドミウムと銅以外の重金属類のうち、砒素等については、宮崎県土呂久地域における砒素による環境汚染が発端となって、全国各地に散在する休廃止鉱山周辺の環境汚染が問題となり、47年度から休廃止鉱山周辺環境汚染調査を実施しており、この環境調査の一環として砒素等による土壌汚染の調査を実施している。47年度には、83の休廃止鉱山について調査したが、その結果は第4-6-3表のとおりであり、休廃止鉱山周辺地域の農用地の重金属類による汚染の概況が明らかになった。なお、この結果、汚染のおそれがある地域については、更に細密な調査を実施する。この調査は48年度においても119の休廃止鉱山周辺地域について実施した。
 また、水銀等については、最近における全国的な環境汚染問題に対処するための全国環境調査を48年度に実施したが、この調査の一環として、水銀等による土壌汚染の調査を実施した。
 このほか、重金属類による農用地の汚染の全般的な状況をは握するための重金属類概況調査を継続して実施している。この調査は原則として、毎年度同じ地点で実施するものであり、47年度の調査結果の概要は第4-6-4表のとおりである。
 更に汚染防止対策に資するため、農用地の土壌が汚染されている地域又は汚染のおそれが著しいと認められる地域において、現地改善対策試験ほ場を設置し、客土、土壌改良等の対策の効果について調査試験を実施した。
 また、鉱山等からの排水に含まれるカドミウム等の特定有害物質による農用地の土壌汚染地域の被害防止対策の基準を検討するため、秋田県杉沢地区ほか6地区に対策基準ほを設け、調査を実施した。


(3) 土壌汚染対策事業
 46年度及び47年度における細密調査によって、カドミウム1.0ppm以上を含む米が検出された地域については、土壌汚染防止法に基づく対策地域の指定を行っており、49年3月6日現在までに第4-6-5表に示すとおり福島県の日曹金属(株)会津製錬所周辺地域等13地域が指定されており、指定総農用地面積は水田604ヘクタール、畑16ヘクタールとなっている。
 なお、カドミウム1.0ppm以上を含む米が生産された地域においては、食品衛生法に基づく規格基準に適合しない米が生産されることを防止するため、土地利用、非食用植物の作付け等の指導を図るとともに水稲を栽培する場合についても、水稲の品種の変更、水管理の改善、土壌の改良等適切な措置をとるよう指導が行われている。
 これらの地域のうち、対策地域に指定された地域で対策計画が策定されたものは、第4-6-5表に示すとおり、群馬県碓氷川流域等5地域であるが、これらの地域においては排土、客土、水源転換等の公害防除特別土地改良事業等を実施している。
 また、このほかの地域についても、対策地域の指定の促進を図っている。

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