1 最近における大気汚染の特徴と要因

　大気汚染が問題となるようになったのは、経済諸活動等の活発化に伴い、大気中に排出された汚染物質が人の健康に被害を与えたり、生活環境に悪影響を及ぼすようになったからである。
　大気汚染物質として代表的ないおう酸化物については、燃料としての重油の使用料の増大に伴い、汚染濃度は上昇したが、41〜42年度をピークに年々減少の方向を示しつつある。これは、いおう酸化物に対する排出規制の強化に伴い、重油の低いおう化の促進、高煙突化、排煙脱硫の実施等にみられるごとく、大気に排出する際、種々の対策が施されたことによるものといえよう。
　近年、大気汚染の現象は、二次汚染物質による光化学スモッグにみられるごとく複雑な様相を呈しつつある。
　次に、我が国における主要汚染物質について47年度の測定結果に基づき近年の汚染状況を概観すると次のとおりである。
　いおう酸化物(SOx)については、全国的にみて41〜42年度をピークとして年々汚染の状況は改善の傾向を示してきたが、47年度においても、引き続き改善の方向にあり、これまでのいおう酸化物に関する種々の対策の効果が現れてきたことがうかがえる。
　しかし、48年5月に改定された新しい二酸化いおうに関する環境基準については、適合しない地域が多くみられ、従来にも増して改善のための施策が要請されている。
　48年5月に新たに環境基準が設定され、同年8月から排出規制が実施された窒素酸化物については全般的な汚染の傾向をは握することは困難であるが、47年度には二酸化窒素測定局105局のうち、環境基準の長期的評価に適合した測定局は松江市一局のみであり、今後の対策に期待するところが大きい。
　光化学スモッグに対する認識の高まりとともに注目を集めるようになったオキシダントと炭化水素については、ともに測定データが少なく、経年的に一定の傾向をは握することは困難であるが、東京と大阪の国設の測定局の結果をみると次のとおりである。オキシダントについては、東京はやや減少傾向にあるが、大阪は横ばい傾向を示している。炭化水素については、東京、大阪ともにほぼ横ばい傾向を示している。
　自動車排出ガスを主たる発生源としている一酸化炭素については、モータリゼーションの進展に伴いその濃度は上昇傾向を示していたが、44年度をピークに、その後減少傾向を示し現在に至っている。