1 国連の動き
(1) 環境計画管理理事会
ストックホルム会議の決議に基づいて創設された環境計画管理理事会の第1回会合が48年6月12日から22日までの間ジュネーブで開催され、我が国も58か国の理事会メンバーの一員として政府代表を送った。
国連環境計画の具体化のための審議では、まず国連環境計画の一般的政策目的として、生物圏内の資源の総合的、合理的管理のための知識を開発普及すること、環境問題に十分配慮して開発を計画し管理すること、環境改善のため開発途上国に技術的財政的援助を行うことが決定され、そのほか海洋汚染の防止、生活環境の改善等17項目の特定目的が選ばれた。また、当面優先してとりあげるべき重点項目として、? 生活環境、健康及び福祉、? 土壌・水質の保全及び砂漠化の防止、? 教育、訓練、援助及び情報、? 貿易、経済、技術及びその移転、? 海洋環境の保全、? 自然、野生生物及び遺伝子資源の保存、? エネルギーについての計47項目を定め、国連環境事務局長に対して具体的計画をたてるよう要請した。これについては、49年3月ナイロビで開催された第2回理事会で検討された。更にアースウォッチのためのモニタリングや情報源照会制度についても、技術的専門家の会合を開いて具体化を推進することやカナダで51年に開催される人間居住会議の準備委員会を設立すること等が決定された。
理事会の決定に基づき、既に幾つかの専門家の会合が行われ、我が国も専門家を派遣している。
また、理事会は環境基金の運営規則を定め、48年の予算を決定した。なお、国連環境事務局は、48年10月1日、ナイロビに開設された。
(2) ECAFE政府間会議
アジア地域共通の環境問題と取り組むため、「環境の分野におけるアジア行動計画」を策定することを目的とする政府間会議が48年10月2日から5日までバンコクで開催され、我が国を含め15か国と10の国際機関が参加した。そこではアジア諸国における環境悪化の根本原因は、開発が不十分であること、大量の貧困、失業、文盲の存在及び人口増加であることが認識され、開発の進展とより良い環境の創造とは極めて密接な関係にあることから居住環境問題に最重点がおかれることとなった。
会議では、このほか天然資源開発、貿易、経済、技術、自然災害、自然保護、教育、訓練、援助、情報等の問題が討議され、我が国が提案した「開発活動が環境に及ぼす影響の事前評価」等20項目の勧告を採択した。
(3) 海洋汚染を巡る動き
海洋汚染の分野では、二つの重要な国際会議が開催された。まず、政府間海事協議機関(IMCO)は、船舶に起因する海の汚染の防止のための条約を、11月2日ロンドンで採択した。この条約では7万トン以上の新造タンカーに専用バラストランクを設けること、規制対象物質が石油以外の有害物質や廃棄物にも広げられたこと等の大きな成果があげられたが、実効性を確保するための取締り方法に関しては、公海上でなされた違反についても沿岸国に取締権を認めることも検討されたものの、最終的には従来どおり旗国主義がとられることとなった。
一方、新しい世界海洋法の創造を目指して過去3年間、準備を進めてきた国連拡大海底平和利用委員会は、48年の夏会期をもってすべての準備作業を打ち切り、12月ニューヨークで始まった第3次海洋法会議に引き継いだ。
(4) 環境週間の開催
ストックホルム会議で我が国等が提案し決定された、6月5日の「世界環境デー」には、国連をはじめ世界各国で多彩な記念行事が行われた。我が国は、6月5日から1週間を「環境週間」と定め、記念講演会、ノーカー運動、自然に親しむ行事等を盛大に行った。