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第2節 

1 巨大化する廃棄物排出量

 全国の廃棄物の総排出量を、厚生省資料により推計すると第2-11図のように46年度においては、産業系廃棄物は約7億トン、都市系廃棄物は約3百万トン、その他一般系廃棄物は約9千万トンで総計約8億トンの廃棄物が排出されていたものとみられる。
 これは小型ごみ集配車(1.5トン積み)5億3千万台であり、この集配車を1列に並べると、地球を65回巡ることとなる。第2-12図は1人当たり排出量と1人当たりの国民所得との関係をみたものであるが、これをみると所得の上昇と廃棄物の排出量の増大とに密接な関係があることがわかる。廃棄物の排出量は今後も増大すると予想され、50年度には、46年度の1.6倍程度になるものとみられる。
 廃棄物の排出量が巨大化した原因として基本的には近年の高度経済成長に伴う経済の拡大や国民生活の向上による資源の消費量の増大があげられる。資源の利用は、現在の技術においては資源を完全に利用できないことから、必ず廃棄物の排出をもたらす。科学技術庁資源調査所の試算によると、我が国の資源の利用は約4割の廃棄物の排出につながるとみられている。
 資源の消費量の増大に加えて廃棄物問題の解決を複雑なものとしている幾つかの要因が近年現れてきている。
 その第1は、太平洋ベルト地帯を中心に近年急速に、工業化、都市化が進展し、これらの地域の全国に占める産業・人口のシェアが高まってきたことである。関東臨海、東海、近畿臨海及び山陽地域における産業廃棄物排出量の伸びはこれらの地域における生産の拡大に伴い、第2-13図にみられるように、他の地域の伸びを上回って拡大しており、狭小な地域における廃棄物の集中的な排出は、有限な環境への負荷を集約的に高めてきたといえよう。
 更に、都市のスプロール化現象や道路交通事情の悪化による廃棄物の収集、輸送効率の悪化並びに処理施設、埋立地等のための適切な用地の不足や取得難に伴って都市の有する廃棄物処理能力は相対的に低下し、廃棄物問題を一層深刻にしてきた。東京都におけるごみ処理コストに占める収集・運搬コストをみると、39年には76.2%であったものが46年には、第2-14図のように83%に達し、廃棄物問題のなかで、処理場の遠隔化等の立地問題が大きなウエイトを占めていることがわかる。都市への人口、物資の集中がこのまま続けば、60年には、東京圏の家庭廃棄物の排出量は3倍以上に達し、清掃工場が60か所必要となるという試算も経済企画庁により示されており、廃棄物の面から、現在のテンポの都市集中は不可能となることを示唆している。
 また、都市への人口集中に伴い、下水道の終末処理場等の都市施設から排出される二次的な廃棄物の排出量も急速に増大し問題となっている。例えば、下水道から生ずる処理汚でいについてみると、50年には約200万トンに達するとみられ、発生する汚でいの処理対策の確立が急がれるところである。
 第2は、消費生活が高度化するに伴い、再利用できる有用物が廃棄物として排出されてきたことである。
 第2-15図は東京都における一般廃棄物の排出量の推移をみたものであるが、紙、金属類等の有用物の割合が高まっており、例えば、紙の割合は40年の22.3%から47年の38.2%へ上昇しており、再生可能な物が廃棄物として捨てられていることが、処理コストの増加や埋立地の不足に拍車をかけている。炭酸飲料のかん化率の推移をみると第2-16表のとおり、ビンからかんへの変化が進んでいることがわかる。この変化は、手軽さ、回収コストの負担減等の要因によってもたらされたものとみられるが、他面で使い捨てを増大することにより使用後の廃棄物処理を困難としている。また、国民生活の向上に伴い、各種の耐久消費財が普及し、使用後は粗大ごみとして廃棄されるものが多くなっているが、これらのなかには再利用できる有用物も含まれている。ニューヨークでは8万台の廃車が路上等に投棄されているといわれる。
 第3は、技術革新に伴い、廃棄の過程を十分に考慮することなく化学製品が開発、生産されてきたことである。例えば、プラスチック製品は、安くしかも丈夫であるという利点から広く使用されており、容器生産に占めるプラスチック容器の割合をみても、第2-17表のように金額ベースで43年の9.2%から47年には22.9%と大幅なシェアの拡大を示している。このような広範な使用を反映して、一般廃棄物へのプラスチック系廃棄物の混入率は10%前後に達している。プラスチック系廃棄物は焼却過程で塩化水素ガス等を排出し、高熱を発生させて炉を傷める等の技術的に困難な問題をもたらす。また、第2-18図にみるとおり、埋立処分にされる比率が高いうえ、プラスチックが自然腐食に強いので、埋め立てても容易に安定せず、埋立効率の低下をもたらし、埋立地の不足を一層深刻なものとしている。
 クーラー、カラーテレビ等の家庭電気製品もコンデンサーに使用されているPCBの量は約800トンと推計される。これらPCB使用製品の廃棄に際して環境保全面から万全を期するために、メーカーにより、PCB使用部品をあらかじめ取り外す方式がとられはじめた。合成物質や有害物質を含む廃棄物は環境汚染をもたらす危険が大きく、これらの物質を使用した製品の開発は、廃棄物の適切な処理を困難にしている。

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