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第5節 

2 地方公共団体の公害対策

 地方公共団体は、公害の監視・測定、取締り等公害規制に関する対策措置の実施にあたるとともに、公害対策事業の推進をはかり、地域における総合的な公害防止対策を講ずる主体として重要な役割を果している。とくに、ここ一両年公害に関する各種権限の委譲等に対応して、地方公共団体においては、前年に引き続いて組織機構の整備拡充を行なうほか、公害対策上の緊急な要請に応じて広範にわたり各種の公害対策事業を実施してきている。また、それぞれの地域の特性に応じ、独自の見地から公害防止条例の制定改正、公害防止協定の締結等を進めてきているが、各地における公害事象が一段と困難を加えつつある現状と、活発な住民活動等を反映して、? 汚染負荷量の地域総量規制、? 環境全般にわたり市民生活に配慮を加える環境保全条例の制定、? 独自の公害被害者救済条例の制定等環境保全の新しい課題に積極的に対処しようとする動きがみられる。
(1) 公害担当組織および職員数
 昭和47年10月1日現在、都道府県においては全団体が公害専門局部課(室)を有しており、あわせて公害センターまたは公害研究所を設置している団体は35団体にのぼる。都道府県の公害担当職員は総数4,568人(第8-5-2表)となっており、これを前年とくらべると1,934人の増加を示している。
 また、昭和47年10月1日現在の公害担当組織別の専任職員数および兼任職員数は第8-5-3表のとおりである。
 次に、昭和47年10月1日現在市町村で公害専門局部課(室)を有しているものは265団体、それ以外で公害専門係(班)を有しているもの423団体である。(第8-5-4表)。
 また、上記以外で公害専任職員を置いている市町村は、276団体である。さらに公害研究所、公害センターを設置した市町村は、昭和47年10月1日現在18団体である。
 次に、市町村の公害担当専任職員数は、昭和47年10月1日現在4,519人であり、これを前年とくらべると1,108人増加している(第8-5-5表)。
 また、昭和47年10月1日の公害担当組織別の市町村の専任職員数は第8-5-6表のとおりである。


(2) 条例の制定状況
 公害防止条例は、地方公共団体の公害防止に対する基本的姿勢を示すものであり、また地域の具体的な公害対策について総合的推進を図る上で重要なものである。国における公害関係法の整備拡充とあいまって各都道府県においてはそれぞれ条例の強化を図ってきている。また昭和46年10月1日現在条例施行規則を制定していなかった11団体も同日以降整備を終り、全都道府県が公害防止条例の施行体制をととのえたことになる。なお、この一年間における条例の制定改正の重点として、? いわゆる総量規制の導入をはかったもの(三重県、大分県等)、? 排出基準の遵守義務違反に対する直罰規定を設けたもの(北海道、青森県、岩手県、秋田県、群馬県ほか8県)、? 立地規制(知事が指定する工場等の立地を許可制とする。)の導入をはかったもの(茨城県、栃木県、山口県、ほか5県)、? 地方公共団体の環境保全に関する基本的施策を定めた環境保全条例を制定したもの(茨城県、岐阜県、福岡県)等があげられる。
 次に、市町村の公害防止関係条例の制定状況をみると、昭和47年10月1日現在294団体が条例を制定している。昭和46年以降公害防止条例・公害対策条例を制定する市町村に加えて、最近では、環境保全条例を制定する市町村も増加している。これらの動向をみれば、公害防止に対する市町村の意欲の高まりを如実にうかがうことができる(第8-5-7表)。
 市町村の公害防止条例は、都道府県におけるそれとくらべて騒音、悪臭、水質汚濁等住民生活により身近な公害の防止に重点を置いて制定されてきているが、ここ一両年の傾向として、?条例上に公害防止協定の締結を位置づけているもの、?立入調査権等の規定を設けているもの、?いわゆる総量規制の導入をはかったもの(川崎市、神戸市等)のほか、?単独の被害者救済措置を制度化したもの(第8-5-8表)等の事例が目立ってきている。


(3) 公害防止協定
 昭和47年10月1日現在公害防止協定を締結している地方公共団体は、38都道府県、461市町村、計499団体で、相手方事業所数は3,202となっており、前年同期とくらべると地方公共団体で168団体、相手方事業所数で1,061の増加をみせている(第8-5-9表)。
 このように引き続き公害防止協定の締結件数が増加している理由としては、?公害防止協定により公害規制法規を補完することができる。?公害防止協定により、当該地域社会の地理的、社会的状況に応じたきめの細かい公害防止対策を適切に行なうことができる。?公害防止協定は将来の具体的な公害対策または公害予防技術の開発を促進させる効果をもっている。?企業側からみても、立地するに際して地域住民の同意を得なければ操業が不可能となっている等の事情があげられよう。昭和47年10月1日現在で協定を締結している事業所を業種別にみると化学工業が415で最も多く、次いで金属製品製造業が388、農業(主として畜産業)が232となっている。このうち、資本金5千万円以上の企業に係るものは全体の41.7%である(第8-5-10表)。
 また、事業所の新増設に際して、締結されたものは全体の36.2%となっている。これとともに最近の事例としていわゆる「越境公害」に対処するためその地方公共団体の区域でない区域に立地している事業所と公害防止協定を締結するものがある。千葉県木更津市と新日鉄君津製鉄所、北海道伊達市周辺の町村と北海道電力伊達火力発電所の間の公害防止協定等がその例であり、全国で1県、76市町村、相手方の事業所数で95を数える。さらに公害防止協定には住民団体が地方公共団体とともに事業所を相手として結んでいるもの、または、立会人として参加しているものなど住民が参加して締結されたものが多く見られるようになってきている。その件数は昭和47年10月1日現在271件でその割合は全体の8.5%となっている。また、住民団体と企業の間で結ばれている公害防止協定も395件と急増している(第8-5-11表)。
 次に公害防止協定の内容についてみると、防止の対象としている公害で最も多いのは水質汚濁で相手方の事業所総数の44.9%がその対策を織り込んでいる。これを、相手方の事業所の主な業種についてみると第8-5-12表のようになる。
 また、公害規制のきびしい態度の反映として、事業所が公害を発生したときの操業停止や、損害賠償について定めたもの、無過失損害賠償責任を定めたもの、立入調査を定めたもの、協定の違反に対する制裁を定めたものが多くなってきている(第8-5-13表)。さらにいわゆる総量規制の観点から地域の汚染排出量との関連を考慮して具体的な公害防止措置を定めたものが現れてきている。
 さらに、公害防止協定を履行しない事業者に対し、その履行を求めるため、地方公共団体、住民団体がその協定に基づく措置をとった事例は、地方公共団体締結分について17件、住民団体締結分について4件、全体で21件(46年度は3件)となっている。


(4) 公害対策経費
 46年度において地方公共団体が支出した公害対策経費は、5,866億円(都道府県2,190億円、市町村3,676億円)となっている。これを前年度(都道府県1,299億円、市町村2,436億円、合計3,735億円)と比べると、2,131億円、57.1%と大幅に増加しており、地方公共団体の公害対策に対する積極的な姿勢がうかがわれる。
 公害対策経費の内訳をみると、建設事業費が5,426億円で、公害対策経費の92.5%と大半を占めている。ついで、人件費、監視・測定用の機械器具購入費等の経常経費が244億円(公害対策経費に占める比率4.2%)、健康被害救済費が4億円(0.1%)となっている。
 さらに建設事業費の内訳をみると、下水道整備事業費が3,843億円で公害対策経費の65.5%と最も高い比率を占めている。また、前年度(2,270億円)と比べると、1,573億円、69.3%と大幅に増加している。ついで廃棄物処理施設整備事業費が721億円(公害対策経費に占める比率12.3%)となっている(第8-5-14表)。


(5) 公害防止施設に対する助成
 昭和46年度の地方公共団体独自の公害防止施設に対する融資実績は、貸付件数3,347件、融資総額14,827百万円にのぼり、昭和44年度にくらべると、貸付件数で1,957件、融資総額で12,104百万円の増加となっている。融資の主な対象は大気汚染防止施設、水質汚濁防止施設等となっている。また、独自の融資制度を有している地方公共団体は、昭和46年度で43都道府県、95市町村、昭和47年度で43都道府県、124市町村となっている(第8-5-15表)。
 次に、昭和46年度における地方公共団体の公害防止施設に対する補助は、補助件数5,268件、補助額は2,213百万円であり、昭和44年度にくらべると補助件数で2,575件、補助額で1,874百万円の増加となっている。補助金交付の主な対象は水質汚濁防止施設等である。また、補助制度を有している地方公共団体は、昭和46年度30都道府県、109市町村、昭和47年度34都道府県、130市町村となっている(第8-5-16表)。

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