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第4節 工業立地政策

 公害問題の抜本的な解決のためには、工業の立地の段階で適正化を図ることがきわめて有効である。すなわち、過密・公害の著しい地域については工業のこれ以上の集中を防止するとともに、積極的に工場の地方分散を促進する必要がある。さらに今後新規に工業地帯として開発される地域については、その地域の開発計画の策定および実施段階において、各種の公害の発生を未然に防止するための対策を織り込むことが必要である。このため昭和47年度においては、次のような施策を講じている。
 第1に、全国土にわたって工業生産の平準化を実現するため、工業の過度集中地域から工業の集積が低い地域への工場の移転を促進するとともに、後者の地域における工場の新規立地を一層促進する施策=工業再配置施策の推進が図られた。すなわち、47年6月、工業再配置促進法および産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律(工業再配置・産炭地域振興公団法)が制定され、10月には、工業再配置促進法に基づく移転促進地域(工業の過度集中地域として工場の移転を促進すべき地域)と誘導地域(工業立地を促進すべき地域)の指定が完了するとともに、上記二法が施行され、工業再配置のための融資、中核的工業団地の造成等の事業を行なう工業再配置・産炭地域振興公団が発足した。
 工業再配置施策は、大都市の過密を工業の面から解消することにより公害解消にも資するものであるが、工業の地方分散が公害の分散につながらないよう、工業再配置促進法上定めることになっている工業再配置計画において環境保全に関し基本的な方針を定めるほか、移転等についての助成措置を講ずるにあたっては、環境の整備、保全の観点から十分審査することとしている。
 第2に、首都圏整備法及び近畿圏整備法に基づき定められた工業等制限区域について、首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律および近畿圏工場等制限法により、工場等の立地制限を行なっている。すなわち上記区域内における一定規模以上の工場の作業場又は大学等の教室の新増設は、一定の場合のほか許可されないこととなっている。とくに47年度においては近年における環境問題の重大性にかんがみ首都圏につき概略次のような改正を行なった。
? 首都圏整備法の工業等制限区域の指定の目的および首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律の目的に、産業・人口の過度集中を防止することにあわせて、都市環境の整備改善をはかることを加えた。
? 制限の対象となる作業場の規模の下限を一部業種を除き1,000m
2
から500m
2
に引き下げた。
? 新増設の許可基準について、
(ア) 従来、工業等制限区域内における人口の増大をもたらさないと認められる場合には新増設を許可することができたが、さらに工業等制限区域内にある作業場の移転に伴って行なわれるものである場合で、かつ都市環境の整備及び改善に寄与すると認められることも必要とされた。
(イ) 公害の防止や産業廃棄物の処理のために必要な新増設は許可できることとされた。
? 工業等制限区域の範囲が拡大された。
 第3に、農村地域における計画的な工場の立地を促進するため農村地域工業導入促進法に基づく施策を実施しているが、同法による農村地域工業導入基本計画、同実施計画においては、公害防止に関する事項を定めている。
 第4に、将来の基幹資源の円滑な供給を確保するとともに、国土利用の再編成を図るため、遠隔地に大規模な工業基地を開発するための基礎的調査を環境保全の観点を重視して継続実施した。
 第5に、公害の防止をはじめとして適正な工業立地をすすめるため、工業開発に先立つ事前の調査として、産業公害総合事前調査、産業立地適正化等調査等を前年度に引き続き実施した。

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