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第3節 

1 国立公害研究所の設立準備

 急速に増大している複雑な公害問題に対処するためには、公害に関する研究の促進は緊急な課題である。特に関連する諸分野との有機的な連けいをもたせつつ、環境汚染の及ぼす影響、公害監視測定方法等の公害研究について中心的な役割を担う研究機関として国立公害研究所の設立準備を進めた。
 国立公害研究所の業務は環境庁設置法第9条で規定されているが、この規定を具体化するため、環境庁としては、46年度より、学識経験者等で構成する設立準備委員会(座長茅誠司東大名誉教授外15名で構成)およびその下部機構として専門的事項を調査審議する専門委員会(座長鈴木武夫国立公衆衛生院次長外28名で構成)を設けて、研究所の研究分野、機能、組織等について検討を進めてきたが、48年3月つぎのような要旨の最終報告が提出されたので、今後はこの報告を参考として研究所の整備を進めていく予定である。
 なお、国立公害研究所設立準備委員会報告の要旨は以下のとおりである。
(1) 公害研究は、多くの研究分野を包括しているが、国立公害研究所は、環境と人間の相互作用を解明する人間環境系の研究に重点をおく。具体的には
a. 人間活動による環境汚染のシステムとしての把握
b. 環境汚染による人間の健康への影響の解明
 という二方向からの究明が中心となろう。
(2) また、真の社会のニーズに対応した目的指向型の研究を重視するとともに、将来の環境問題を未然に察知し、これに対処する研究を行なう。
(3) 研究体制は、一つの研究テーマに多くの専門分野の研究者が参画するインターディシプリナリーな活動を志向し、このため研究企画機能の強化を含め、新しい発想に基づく研究所の運営を行なう。
(4) 研究所の運営にあたっては、大学、研究機関との協力による総合的研究の実施、客員派遣研究員制度の大幅な活用による他の機関との交流、および生物環境調節実験施設、大型環境風洞等大型実験施設の共同利用ならびに必要に応じて各地に研究フィールドおよび協同研究者を持つこと等を考慮する。

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