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第2節 

1 大気汚染

 わが国の大気汚染は、従来からのいおう酸化物、浮遊ふんじん等による汚染問題に加えて、最近では燃料消費量の増大等に伴い、窒素酸化物による大気汚染が重要な問題となってきているが、とくに、これが各地で多くの影響を与えている光化学スモッグの主要な原因物質であることを考慮すると早急な抑制技術の開発が望まれている。
 現在、窒素酸化物の防除技術に関する研究は、国立試験研究機関では通商産業省工業技術院を中心として、ボイラ等固定燃焼装置から排出される窒素酸化物の生成を抑制する燃焼技術の研究、ならびに一酸化窒素を無害化する触媒の研究開発等が推進されており、前者については前年度の低酸素燃焼による抑制効果の研究に引続き47年度は燃焼排ガス再循環燃焼法による抑制効果について研究する一方、後者について活性、寿命の優れた触媒を探索するため各種の条件の下における触媒の化学的性質を詳細に検討し、燃焼炉から排出される一酸化窒素の除去に適用できる性能の優れた触媒の探索を行なった。
 また、環境庁では研究委員会を設置して、窒素酸化物の防除対策を確立するため、脱硝技術に関する内外の文献を調査し、これらの情報を収集するなど調査研究を推進した。
 自動車排出ガスに関する研究は、通商産業省工業技術院ならびに運輸省の附属研究機関を中心として推進されているが、工業技術院においては自動車排気ガスによる光化学反応の解明を図り、排気ガス中の粒状物質の測定評価法を確立して粒状物質による大気汚染防止の基礎技術を開発するとともに、昭和50年以降の排気ガス規制目標あるいはそれ以上に高度の良化目標に対応できる触媒式浄化装置の開発研究を行ない、また、ガソリンの無鉛化に備えて、ガソリン組成(芳香族、オレフィン、添加剤など)に関する望ましい基準を定めるための基礎研究を実施した。
 また、電気自動車に関する研究は、通商産業省工業技術院において大型プロジェクト制度により推進されているが、47年度は46年度の基礎的研究をもとにして、先行実験車の試作研究、電池構造の研究および電動機、制御装置の研究試作等について研究を行なうとともに、充電方式利用システムについても引続き研究を行なった。
 一方、運輸省においては自動車から排出される有害成分の防止に関する規制との関連において、規制目標とこれを評価する合理的な評価試験条件を設定するため、本年度はディーゼル機関を対象として研究を推進するとともに、ディーゼル黒煙の濃度測定に関する研究を推進した。また、各種の排気ガス清浄装置の耐久試験の手法を確立するため、走行時の排気状態とエンジン出力との関連を統計的に求め耐久試験の方法と寿命に関する必要なデータを得た。
 光化学スモッグに関する研究については、前述の窒素酸化物の排出防止技術に関する研究とあいまってその発生の原因、機構、影響等について早急に研究を推進する必要がある。47年度においては環境保全総合調査研究促進調査費により厚生省ほか5省庁の附属研究機関により総合研究がなされ、局所地域における汚染物質の時間的、空間的変動と風向、風速、紫外線等の気象現象との相互関係を究明して光化学反応機構の解明に努めた。
 また、主要汚染物質である炭化水素等について光化学反応により生成される物質ごとに分析可能な測定技術を開発するほか、レーザー光の吸収または散乱特性を利用して、亜硫酸ガスや窒素酸化物等の濃度およびその分布状態が連続測定できる蛍光レーザーレーダーを開発し、これを用いて自然大気中におけるこれらの汚染物質の実測を行ない、測定技術の向上を図った。
 光化学スモッグの生物影響に関する研究ではオゾン、窒素酸化物およびこれらといおう酸化物との混合ガスが、農作物等に及ぼす影響について被害と汚染度の関係を把握し、さらにオゾン等オキシダントの低濃度反覆曝露による影響について実験動物を用いて究明した。
 大気汚染物質の環境濃度等の予測手法に関する研究については、風洞による拡散相似実験を中心として41年度は大気拡散の状態を直接支配する大気乱流の構造を測定し、拡散状態を明らかにするとともに、大気汚染に関連する局地予報の客観的方法を確立するため、汚染物質を滞留させる局地の気象条件を統計的に予報するモデルの改良、開発を行なった。
 また、環境庁においては、大型大気環境実験施設(温度、速度の成層条件を具備する大型風洞)に関する委託研究を環境保全総合調査研究促進調整費により実施し、基幹装置の小型模型を製作して総合的な性能検定実験を行なった。

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