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第3節 

2 悪臭防止対策

(1) 悪臭防止法の施行
 悪臭防止法は公害対策基本法の精神にのっとり、工場その他の事業場から発生する悪臭について必要な規制を行ない、悪臭問題の早急な改善とその防止対策の徹底を期することにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的にして制定されたものであり、悪臭防止法施行令、施行規則および悪臭物質の測定方法とともに47年5月31日から施行された。
 これに先だち中央公害対策審議会から「悪臭物質の指定および悪臭規制基準の範囲の設定等に関する基本的方針について」の答申が出され、指定すべき悪臭物質、規制基準の範囲および測定方法については答申に沿って設定が行なわれた。
(2) 悪臭防止法の概要
 悪臭防止法は、悪臭の原因となる悪臭物質を政令で定め、それらの悪臭物質の排出を規制するため、都道府県知事が規制地域の指定、規制基準の設定を行なうとともに、規制基準に適合しない悪臭物質を排出している事業場に対しては、改善勧告、改善命令を発動して是正させる措置を講ずることにより悪臭公害を防止していくこととしている。
ア 悪臭物質
 悪臭防止法は工場その他の事業場から排出される悪臭を悪臭物質としてとらえ、これを規制することとしているが、現に、悪臭公害の主要な原因となっている物質であり、かつ、当該物質の大気中の濃度を測定しうる物質として、政令では次の5物質が指定された。?アンモニア、?メチルメルカプタン、?硫化水素、?硫化メチル、?トリメチルアミン
イ 規制地域
 都道府県知事は住民の生活環境を保全するため、事業場における事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出を規制する地域を規制地域として指定することとされており、48年3月末現在、青森、秋田、栃木、静岡、岐阜、三重、徳島の7県において、地域指定が行なわれている。
ウ 規制基準
 都道府県知事は規制地域について悪臭物質の種類ごとに悪臭物質の感覚に対する刺激の強度(第4-3-4表)と大気中の濃度との関係を基礎として定められる基準の範囲内において規制基準を設定することとされている。悪臭防止法施行規制で定められた敷地境界線における規制基準の範囲および排出口における規制基準の設定方法は第4-3-5表のとおりである。
エ 改善勧告及び改善命令
 都道府県知事は、規制地域内の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出が、規制基準に適合しないことにより、住民の生活環境がそこなわれていると認めるときは、悪臭物質を発生させている施設の運用の改善、悪臭物質の排出防止設備の改良その他の措置をとるべきことを勧告することができる。さらに、改善勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。なお、動物の飼育を行なう事業場、でん粉の製造を行なう事業場等については、悪臭防止技術が未確立であること等の理由から法施行の日から2年間改善命令の適用は猶予されている。
オ 事務の委任
 悪臭がきわめて地域性の強い公害であることにかんがみ、指定都市(地方自治法第252条の19の第1項)の長には、都道府県知事と同等の権限を与えるとともに、その他の市町村長にも都道府県知事に属する事務のうち、規制地域の指定と規制基準の設定以外の事務は政令で委任されることとされている。

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