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第3節 

1 悪臭の現況

(1) 概要
 悪臭は嗅覚という人の感覚に直接知覚されるものであるだけに、古くから多くの地域で社会問題となってきた。とくに近年において悪臭公害が全国的に住民の生活環境を損うものとして問題にされてきたのは、各種企業の大規模化に伴う汚染の広域化、都市の近郊、郊外へのスプロールに伴う住居の悪臭発生事業場への接近、さらに住民の快適な生活環境保全への関心の高まり等を反映したものとみられる。
 地方公共団体が受理した悪臭に関する苦情は毎年増加の一途をたどっており、昭和46年度における受理件数は17,746件(対前年比18%増)におよび、公害に関する苦情のうち約23%を占めている(第4-3-1表)。


(2) 悪臭の実態
 悪臭の原因となる物質については、業種、事業の規模、作業方式等により種々異なるが、代表的な悪臭原因物質とこれを排出する主要な発生源事業場は第4-3-2表のとおりである。また、これらの事業場についてみると第4-3-3表のとおり養鶏養豚業と、へい獣処理場等による悪臭公害件数が多い。悪臭の原因物質の排出の形態およびその排出により影響を受ける地域の範囲についてみると多種多様であり、たとえば、クラフトパルプ製造工場から排出される硫化水素、メチルメルカプタン等の大部分は高煙突からのものであり、1〜2kmも離れた地点が最も悪臭が強く感じられるのに対し、畜産業等については、畜舎からの悪臭の原因物質の排出が主であり、隣接地帯が最も悪臭が強いといわれている。

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