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第1節 

4 振動公害の現況と対策

(1) 振動公害の現況
 振動とは、地面又は建物の上下方向、縦横方向の揺れをいうが、人間が感ずる振動の周波数の範囲は0.1Hz〜500Hzといわれており、特に公害として問題とされるのは1Hz〜90Hzの範囲である。
 振動による影響は、住民にとっては生理的な影響より、むしろ心理的、感覚的な問題としてとらえられており、気分がいらいらする、不快に感ずるなどの情緒的な影響、寝つきにくい、目がさめる、思考や作業が妨げられるなどの生活妨害を与えている。
 また、家具、調度品などの損傷、耐久期間の短縮、壁、タイルのひび割れなど物的被害がかなりはっきりしたものもみられる。
 これらの振動公害の発生源を細かくみてみると第4-1-3表に示されるように送風機、鍛造機、コンプレッサーなどから発生する工場振動、くい打くい抜作業、山留作業、土の締固め作業などから発生する建設作業振動、自動車、鉄道などの運行に伴い発生する交通振動に分けられるが、特異なものとしては、航空機のように地面による伝搬を伴わず直接空気を媒体として建物の振動が発生している例もみられる。
 振動公害の苦情発生件数は、東京都の例に示されるように、大都市のスプロール化、とりわけ住宅と町工場の混在状態の増加、機械施設の大型化、モータリゼーションの進行等に伴って、近年急激に増加している(第4-1-4表)。


(2) 振動防止対策
 振動公害は、騒音公害の発生源と同一のものが多いが、騒音公害にみられない難しい面もみられる。すなわち、振動は地面を伝搬するが、伝達媒体が地質の構造等により異なっているので、伝搬特性が異なる。
 また、地面の振動と建物の振動との間に差があり、増幅された形をとることが多く、建物の種類(木造、ブロック造り、鉄筋コンクリート造りなど)、建物の構造、老朽度等により大幅に変化する。さらに、振動の感覚器官は、平衡感覚器官、皮膚感覚器官等があり、また、それらが垂直振動、水平振動により感じ方が異なる等の特性があり、対策を一層難しいものとしている。
 現在、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県等においては、工場その他の事業場から発生する振動公害について条例をもって規制を行なっているが、振動の測定方法、振動による影響などをさらに検討する必要があるので、環境庁においては、47年度から工場振動、建設振動、自動車振動、鉄道振動にかかる総合的な実態調査を行なうとともに、振動の地面伝搬の性質、地面振動と建物振動の対応、振動公害における測定方法等について調査研究を進めているところである。

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