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第4節 

2 海洋汚染防止対策

(1) 規制措置の強化
 海洋汚染防止法は船舶および海洋施設からの油および廃棄物の排出の規制、廃油の適正な処理の確保、海洋の汚染の防除のための措置などにより、海洋の汚染を防止し、海洋環境の保全に資することを目的として、46年6月24日より一部施行されていたが、47年6月25日から本法の主要部分である船舶からの油および廃棄物の排出の規制(第2章、第3章関係)、海洋施設からの油および廃棄物の排出の規制(第4章)等の規定が施行されることとなり、この全面施行とあわせて関係政省令等の整備が図られた。
 このうち、油については、規制対象船舶の拡大、排出基準の強化等従来の規制を大幅に強化するものであるが、廃棄物の排出規制についても、その排出海域、排出方法に厳しい要件が課せられることとなった。
(2) 監視取締り体制の強化
 海上保安庁は、多発する海洋汚染に対し、47年度には、海洋汚染防止法等の海上公害関係法令の全面施行に伴う油、廃棄物、工場排水の排出規制の強化に対応して、本庁に海上保安試験研究センターを、第七管区海上保安本部(門司)に海上公害監視センターをそれぞれ設置したほか、東京、大阪等の主要な海上保安部署に監視、取締り要員を増強するなど、組織、人員の充実強化を図った。また、巡視船艇の代替建造および監視用ヘリコプターの増強を図るとともに、赤外線による流出油の夜間監視装置の装備など監視取締り体制の一層の充実強化を図った。
 この結果、47年には、第3-4-2表のとおり、1,177件に及ぶ海上公害関係法令違反を検挙した。
 また、廃油ボール対策としては、タンカーについてロード・オン・トップ方式(油性バラスト水の油水を分離し、海水のみを排出する方式)の採用と廃油等の陸上処理体制の整備が進められているが、47年6月25日から海洋汚染防止法が全面施行されたことに伴い、日本国籍の外航タンカーについては、事実上ロード・オン・トップ方式が義務づけられ海洋に排出される油の量は大幅に減少しているものと思われる。しかし、外国船に対しては、領海外における規制ができないため廃油ボールの絶滅を期するためにはなお問題があり、このため、わが国としてはI」M」C」O(政府間海事協議機関)等の国際機関に働きかけて、従来より厳しい油の排出規制を内容とする1969年の改正油濁防止条約の早期発効をはかる必要がある。
 さらに、海上保安庁においては、47年度から海洋環境保全のための科学的調査を実施することとしたが、47年度においては、日本周辺海域16測点および日本南方海域の定期海洋観測線における海水中の油分やCOD等の調査を実施するとともに、廃棄物排出海域(本州東方および日本海北部)における海底堆積物中の油分の予備調査を実施した。
 また、気象庁においても、日本近海および西太平洋における海洋の全般的汚染状態(バック・グラウンドの汚染)の定期観測を実施した。


(3) 港湾環境保全対策
 港湾における環境保全対策としては、海底に堆積した汚泥を浚渫して、悪臭等の汚濁源を除去したり、海水の変換が悪く水質が悪化している箇所へ浄化用水を導入する等の公害防止対策事業と船舶の油による海洋汚染を防止するための廃油処理施設の整備が挙げられる。
ア 港湾公害防止対策事業
 昭和47年度は事業費3,288百万円(うち国費632百万円、事業者負担3,024百万円)で田子の浦、北九州(洞海湾)、水島、東京湾等6港で汚泥浚渫を、また新潟港において浄化用水の導入事業をそれぞれ実施した。
イ 廃油処理施設の整備
 船舶廃油には油性バラスト水、タンク洗浄水およびビルジ等があるが、42年度より主として廃油が大量に発生する港を中心に処理施設の整備を開始し、47年度末では46港71か所が整備されることとなっている。
(4) 船舶による海洋汚染防止対策
 船舶内において生ずる廃油のうち、タンク洗浄水および油性バラスト水については、外航タンカーはロード・オン・トップ方式により処理し内航タンカー等では専用バラスト方式または陸上の廃油処理施設の利用によって処理しているが、必ずしも十分に利用されているとはいえないので、その利用率を高める必要がある。
 ビルジについては、海洋汚染防止法に基づき船舶所有者に対し、油水分離装置、漏油防止装置等のビルジ排出防止装置の設置が義務づけられており、また、油水分離装置によって分離した廃油等を船舶内において処理するための焼却炉も積極的に採用されている。
 さらに油以外の廃棄物の排出規制に伴い、旅客船等には汚物処理装置が設置されている。
 なお、これらの装置の設置を促進するための助成策を講じている。
(5) 国際協力の推進
 海洋汚染は、グローバルな現象であり、国際的な汚染防止体制の確立が不可欠であることから、国際連合、I・M・C・O等を中心に様々な対策が検討されている。世界有数の海運国家であり、また、海洋汚染防止に全力を注いでいるわが国としては、これらの国際協力に積極的に参画しているところであるが、最近における国際的動向としては、「海洋投棄規制条約」の採択およびI・M・C・Oにおける海洋汚染防止活動が注目される。
 海洋投棄規制条約は、これまで国際的には規制の行なわれていなかった廃棄物の海洋投棄を新たに規制しようとする画期的な条約であり、国連人間環境会議の準備段階において設定された海洋汚染問題政府間作業部会において検討が重ねられ、ストックホルム会議に提出された。同会議では条約の採択は行なわれなかったが、英国の主催する国際会議を1972年中に開催し、同条約の採択を行なうべき旨の決議がなされた。これを受けて、英国は、47年10月30日、海洋投棄規制条約採択会議を開催し、2週間に及ぶ討議の後、11月13日条約の採択が行なわれた。
 また、国連においては、海洋法諸条約を再検討し、現代に即応した海洋法制度を樹立するため、第3次海洋法会議を開催することが決定されており、その準備が、拡大海底平和利用委員会において進められているが、ここでは、海洋汚染防止に関する管轄権の問題、海底開発に伴う汚染の問題等様々な問題が検討されている。
 一方、I・M・C・Oにおいては、今年秋に海洋汚染に関する国際会議を開催することが決定されており、その準備が、海洋汚染小委員会等の各小委員会で進められているが、その最大の課題は、現行の汚濁防止条約を全面的に改正し、構造基準を中心に有害物質の排出規制、有害物質を運搬する船舶の設備、船舶において発生する汚水および廃棄物の処理基準等を含む総合的な海洋汚染防止条約を作成することである。

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