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第2節 

4 漁業被害

(1) 漁業被害の概況
 水質汚濁による漁業被害は、全国的な範囲にわたり多様な形で発生している。各種の工場からの排水、都市下水の流入、船舶からの違法な廃油投棄あるいはタンカー等の衝突や座礁事故による油の流出、農薬や家畜ふん尿の流出、廃棄物やし尿の投棄等多数の汚濁源の長年にわたる継続的かつ集積的な複合汚染による水質汚濁、ヘドロの堆積、ビニールやゴミ等の固形物の浮遊または沈積および赤潮の発生等により漁業被害が多く発生している。また、船舶等からの油類の大量流出による沿岸漁業の汚染やのりの被害および毒物による魚介類の大量へい死等の突発的な原因による漁業被害も少なくない。なお、最近においては、原子力発電所等からの温排水の影響も問題となっている。
(2) 漁業被害の態様及び被害額
 水質汚濁等による漁業被害の態様としては、? 直接的な操業不能および操業能率低下による漁獲の減少、? 漁獲または養殖対象生物の減少および生態系の変化による有用魚種の減少、? 重金属類またはPCBの蓄積による商品価値の低下または販売不能、? 着臭、着色、奇形等による商品価値の低下または販売不能、? 漁船、漁具、養殖施設等の被害、? 汚染の風評等による商品価値の低下、? 汚染された漁場の復旧に要する費用の増大等が考えられる。
 46年度に発生した水質汚濁等による突発的な漁業被害は、都道府県の報告によれば総件数306件、被害額3,743百万円(被害額不明分101件分を除く)であった。これに44年度に都道府県を通じて調査した水質汚濁による継続的被害額14,581百万円を加えると総被害額は、最低限にみても18,325百万円以上に達している。46年度に発生した突発的な漁業被害の特徴としては、工場、事業場の排水等によるものが大幅に減少し、船舶からの油による被害が総発生件数の約60%にも達しており、そのうち加害者不明の悪質なタレ流しが油濁による被害発生件数の43%にも達している。

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