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第3節 

1 テクノロジー・アセスメント

 科学技術は、プラスの効果の反面、マイナスの効果をもたらすことがある。
 新技術、新物質の開発に当たって、その技術、物質がもたらす効用と影響を事前に予測、評価することにより環境破壊等の悪影響を未然に防止しようとするのが、テクノロジー・アセスメントの考え方である。
 このような考え方は、わが国においては、科学技術会議など各方面の政府の諮問機関の答申報告などにおいてその導入が主張されており、また48年2月閣議決定のあった経済社会基本計画においてもその重要性が述べられている。
 しかし、テクノロジー・アセスメントを実際にどのように進めていくかという手法の面ではこの分野で最も進んでいるアメリカにおいても、まだその確立をみていない。
 アメリカにおいてはテクノロジー・アセスメントの方法論開発のための事例研究は、60年代から全米工学アカデミー、その他民間シンクタンク等において行なわれており、1972年10月には、「1972年テクノロジー・アセスメント法」が成立し、「技術の適用における現実のおよび予想される影響を検討」し、適切な情報を立法府に提供するため、議会にテクノロジー・アセスメント局が設立されることとなった。
 また、わが国においても科学技術庁、通商産業省などにおいて、テクノロジー・アセスメントの手法開発が進められ、実際に46年度から種々の事例研究が行なわれている。
 環境問題に関連してテクノロジー・アセスメントの概念を実際に適用することは、PCB問題でみられたような新化学物質については、それが、環境を通じて現在および将来にわたる人の健康に係わってくる問題であるだけにとくに重要である。新化学物質は、技術文明の進展に伴い、今後も数多く出てくることは疑いないところであり、発がん性、催奇形性等の諸毒性を有する物質については環境に放出されないことが基本でなければならない。
 この点に関連してPCB問題を契機として、47年の国会において衆参両院でなされたPCB汚染対策に関する決議の中で事前審査性の確立が指摘され、48年第71回国会に政府から「化学物質の審査および製造等の規制に関する法律」案が提出された。これによって、化学物質の事前審査制度が創設されることとなる。今後の新化学物質の実用化に当たっては、こうした事前審査制度により、十分安全性を確認していかなければならないが、一度安全性が審査された物質についても、その後監視を続け、繰りかえし再チェックを行なっていくことが重要である。

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