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第1節 

1 環境行政の現段階

 昭和46年、国の行政機関として環境庁が誕生し、また第3-1-1図にみるように、各都道府県の公害専門部局も整備され環境保全行政の担当組織は整った。
 また、これに対応して、国および地方公共団体の環境保全関係予算も近年大幅な増加を示した。すなわち国の予算は、第3-1-2図にみるように42年度から48年度までの間に、国全体の予算が、約2.9倍であるのに対し、環境保全関係予算は約5.8倍と大幅な伸びをみせ、48年度には2,737億円と48年度の国全体の予算の1.9%を占めている。
 都道府県および市町村の環境保全関係予算も拡充された。46年度の地方公共団体の公害関係決算額は5,866億円であり、45年度のそれに比べ約57.1%の伸びを示した。これは、地方公共団体の歳出決算額(普通会計)全体のこの間における伸び21.3%を大幅に上回るものであった。
 このように、環境保全関係の行政組織および予算は、次第に充実されつつあるが、次にこれらを背景に推進されてきた環境行政について、その中心となる環境規制の強化という面からふりかえってみよう。
 環境規制は、汚染因子ごとに、人の健康および生活環境に害の生じない環境基準値を設定し、さらにそれに対応して汚染者の汚染排出許容限度(排出基準)を設定することにより、汚染者に環境汚染の未然防止のために遵守すべきレベルを示し、その遵守状況を常時監視し、また違反者に対してはこれを取り締り、環境保全を実現する手段である。
 こうした環境規制は、法律面では45年12月のいわゆる公害国会における関連法律の制定改正によりその飛躍的な強化が図られたが、これを踏えて行政面においても、規制強化が進められてきた。
 すなわち、排出基準値は、時を追って強化され、いおう酸化物についてみれば、地域別規制値(K値)は、43年12月以来48年1月に至るまで4回にわたりその強化が行なわれた。その結果、例えば神奈川県川崎地区の場合、既存の事業場に適用される地域別規制値は、43年12月20.4であったものが、44年2月に11.7、47年1月には、7.01、48年1月には6.42に強化され、新設の事業場に適用されるK値も44年の5.26から48年1月以降は2.92へと強化された。また、水質関係でも、静岡県田子の浦地区の場合、セミ・ケミカル・パルプ製造業に適用される基準は、暫定的な一律基準COD値1,600ppm以下(ただし、48年6月24日以降780ppm以下)に対して、240ppm以下の極めて厳しい上のせ基準が設定されている。
 全国一律の規制基準に加えて、都道府県が各地の実情に応じて設定するいわゆる上のせ排出基準は、すでに大気関係で16(48年3月末現在)、水質関係で39(48年3月末現在)が設定されている。
 また、三重県、川崎市等の若干の地方公共団体において、いおう酸化物に関し、地域全体の排出量を抑制する観点から工場単位に排出総量を規制する方式をとつているところがある。
 このような基準の強化のほか、地域の具体的公害対策を規定するものとして、地方公共団体の公害防止条例は重要なものであるが、すでに45年までに各都道府県とも公害防止条例の制定をみている。これを規制の対象種類別にみると、第3-1-3図のとおりであり、大気汚染、水質汚濁のほか、騒音、振動、悪臭のいわゆる感覚公害についても、ほとんど全部の都道府県で規制が行なわれている。
 これらの規制は、当然に規制者側の監視取締り体制の整備によって裏づけられなければならない。都道府県知事は大気汚染、水質汚濁について常時監視を行なうこととなっているが、これを汚染状況の測定網の整備の面からみると、たとえば、大気汚染状況を各測定局から常時自動的に監視センターにデータ送付し、集中監視するテレメーター・システムを設置している都道府県および政令市は、45年度の15都道府県および12政令市から、47年度には25都道府県および21政令市にそれぞれ増加をみせている。
 一方、違反者取締りの体制も強化される方向にある。その一つの指標として、都道府県の公害担当職員の数の推移をみると、45年度末合計1,300人から、47年10月1日現在には合計4,600人と大幅な拡充を示している。これら職員による取締り状況は、46年度において、大気関係で94の施設に対し改善命令を発動し、勧告その他の行政指導は5,942の施設について行なった。水質関係では、同年度中に247件の改善命令を行ない、2,247件の行政指導を行なった。

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