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第5節 

1 公害紛争の処理

 公害紛争には、その当事者が多数に及ぶ場合が多く、また、加害行為と被害の発生との間の因果関係の究明が困難である等多くの問題がある。このような公害紛争における問題は公害そのものの特質から生じていることはいうまでもない。
 また、公害紛争も、他の私人間の紛争と同じく、最終的には民事訴訟等の司法制度により解決されることになるが、現行の司法制度は、公害紛争のようにその解決に専門性、技術性を要し、しかも迅速な解決を図る必要があるものについては、必ずしも十分な効果をあげていないうらみがある。
 このような公害紛争の特殊性を十分にふまえ、さらに公害紛争の処理に必要な措置を構ずべき旨を定めた公害対策基本法の精神にのっとり、公害紛争の迅速かつ適正な解決を図るために行政機関が和解の仲介、調停および仲裁を行なうこと等を定める公害紛争処理法(昭和45年法律第100号)が、第63回国会において、制定された。
 公害紛争処理法による公害紛争処理制度は、45年11月1日から発足し、国の紛争処理機関として内閣総理大臣の所掌の下に中央公害審査委員会が、都道府県の紛争処理機関として公害審査会(これを置かない都道府県は、公害審査委員候補者を委嘱する名簿方式を採用。以下「公害審査会等」という。)が設置された。47年3月末現在の都道府県における公害審査会等の設置状況をみると、34都道府県が公害審査会方式、12府県が候補者名簿方式を採用している。
 公害紛争処理法が施行された45年11月から47年3月末までの間に、同法に基づいて申請のあった事件は、中央公害審査委員会が受理したもの7件、都道府県の公害審査会等が受理したもの24件(東京5件、大阪・三重各3件、兵庫・愛知・福島各2件、長崎・福岡・鳥取・福井・静岡・埼玉・宮城各1件)の計31件である。なお、これらのうちの23件が46年度中に受理されたものとなっている。これらの31件の事件について公害の種類別および和解の仲介または調停の申請別の内訳は、第6-5-1表のとおりとなっている。
 また、これら31件の事件の処理状況については、47年3月末現在、既に13件の事件が公害紛争処理法による終結をみている(第6-5-2表)。その内訳は和解の成立4件、調停の成立6件、和解の仲介または調停の打切り各1件、調停の取下げ1件となっているが、残る18件の事件のうちにも、近日中に事件の終結に至ることが期待されるものが、4件程度ある模様である。
 以上のように、公害紛争処理法に基づく公害紛争処理制度は、創設以来着実にその成果をあげつつあるといえようが、今後さらに、この制度の存在およびその活動状況を、広く一般に周知させる必要があろう(公害紛争処理制度の充実強化のために新たに採用される裁定制度については、昭和47年度において講じようとする公害の防止に関する施策第9章第1節参照)。

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