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第4節 

3 基本方針の内容

(1) 第二次地域のうち東京地域、神奈川地域および大阪地域に係る基本方針
 昭和46年5月、それぞれの関係都府県知事に指示された公害防止計画策定の基本方針は、公害防止計画策定地域、公害防止計画の役割、目標、防止施策、自然環境の保護、公害の監視測定体制の整備および諸計画との関係等の項目から成り立つているが、その要点は、次のとおりである。
ア 公害防止計画の策定を指示した地域および地域の範囲
 (地域名) (地域の範囲)
 東京地域 :東京都(島しよを除く。)のうち都市計画区域
 大阪地域 :大阪府のうち都市計画区域
 神奈川地域:神奈川県のうち、相模川沿川以東の区域
イ 地域の概要
 東京地域、大阪地域および神奈川地域は、大都市地域であり、現に大気汚染、水質汚濁等の公害が著しく、かつ、公害の防止に関する施策を総合的、計画的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難と認められる地域である。
ウ 目標および達成期間
 おそくとも昭和56年までに、汚染物等の程度を目標値の範囲内に引き下げ、またはその範囲内に維持することを指示している。この目標値は、環境基準を建前とし、環境基準未設定の浮遊ふんじん、悪臭および地盤沈下については、第一次地域の千葉・市原地域等と同様に暫定目標値を設定している。なお、方針の指示後、たとえば、浮遊ふんじんのように環境基準が設定された場合には、その時点から暫定目標値は、環境基準の値に変更することとしている。
エ 防止施策等
 これらの地域における公害は、深刻かつ広範であり、多岐にわたる対策を講ずる必要があるが、最も効果的に地域の公害を防止するために、発生源に対する規制、立地規制、土地利用の合理化、公害防止事業の推進等各種の防止施策を総合的に組み合わせて目標の達成を図り、あわせて公害の防止に資するよう自然環境の保護に努め、また、公害の監視測定体制を整備するものとしている。
オ その他
 協力体制の確保に努め、また、地域に係る開発、環境整備、水資源の利用、防災等に係る計画との整合性に配慮するものとしている。
(2) 第二次地域のうち千葉県江戸川流域、埼玉県荒川水系流域、京都府淀川流域および奈良県大和川流域に係る基本方針
 これらの4地域は、(1)の総合的な公害防止計画の策定を必要とする3地域に加えて、水質保全の必要性の高い関連河川流域について広域的な見地から水質汚濁の防止に係る計画を策定する必要があると認め、関係府県知事に指示したものである。
 基本方針の構成は、おおむね前項の場合と同様であり、その要点は、次のとおりである。
ア 公害防止計画の策定を指示する地域および地域の範囲
 (地域名)     (地域の範囲)
 千葉県江戸川流域 :江戸川流域に係る区域で指定する区域
 埼玉県荒川水系流域:荒川水系(荒川、新河岸川、中川および綾瀬川)の流域に係る区域で指定する区域
 京都府淀川流域  :淀川(宇治川、桂川および鴨川を含む。)の流域に係る区域で指定する区域
 奈良県大和川流域 :大和川の流域に係る区域で指定する区域
イ 地域の概要
 千葉県江戸川流域および埼玉県荒川水系流域は東京地域に、京都府淀川流域および奈良県大和川流域は大阪地域にそれぞれ隣接し、現に水質汚濁が著しく東京地域または大阪地域とあわせて水質汚濁の防止に関する施策を講じなければ水質汚濁の防止を図ることが著しく困難であると認められる地域である。
ウ 目標および達成期間
 水質汚濁に係る環境基準を目標とし、これをおそくとも昭和56年(千葉県江戸川流域においては、昭和50年)を目途に達成するものとしている。
エ 防止施策等
 水質汚濁対策として、排水等の規制、下水道の整備等、土地利用の適正化等および京都府淀川流域、埼玉県荒川水系流域については特に河川流況の改善等を重点として、それぞれ目標の達成を図るものとしている。
オ その他
 埼玉県荒川水系流域については、計画策定区域の一部について水質汚濁以外の公害を含めた総合的な公害防止計画を策定する必要があるとし、また、千葉県江戸川流域については、計画策定区域の一部およびこれに隣接する船橋市等を含めた区域について、地盤沈下に係る防止計画を策定する必要があるとして、これらについては、別に基本方針を示すものとされている。
(3) 第三次地域(鹿島地域、名古屋等地域、兵庫県東部地域、北九州地域および大分地域)に係る基本方針
 名古屋等地域、兵庫県東部地域および北九州地域は、いずれも第二次地域に準ずる大都市地域であり、大分地域および鹿島地域は、それぞれ新産業都市および工業整備特別地域に属する地域である。前者は、現に公害が著しく公害防止に関する施策を総合的、計画的に講ずる必要がある地域として、後者は、公害の未然防止をはかるべき地域として、それぞれ計画策定を指示したものである。
 46年9月、それぞれの関係県知事に指示された公害防止計画策定の基本方針の項目は、第二次地域と同様であり、その要点は、次のとおりである。
ア 公害防止計画の策定を指示した地域および地域の範囲
 (地域名)   (地域の範囲)
 鹿島地域   :鹿島町、神栖町、波崎町の3町
 名古屋等地域 :?名古屋氏等4市4町2村
         ?一宮市等10市17町6村
 兵庫県東部地域:?尼崎市等5市
         ?神戸市等5市1町(都市計画区域)
 北九州地域  :北九州市
 大分地域   :大分市、佐賀関市
 (注) 名古屋等地域、兵庫県東部地域の?は、水質汚濁の防止に係る計画を策定する区域である。
イ 地域の概要
(ア) 鹿島地域
 鹿島地区工業整備特別地域の主体をなす鹿島臨海工業地帯に巨大な重化学コンビナートが建設されている地域である。開発の初期段階から公害防止のための事前調査を実施する等計画的に立地が進められたが、生産規模の拡大とともに公害が問題化している。
(イ) 名古屋等地域
 わが国四大工業地帯の1つであるが、近年名古屋港を中心として臨海部に大規模重工業地帯の造成が推進されている等新旧産業が併立し、これらの影響により、大気汚染、水質汚濁等各種の公害が発生している地域である。
(ウ) 兵庫県東部地域
 阪神工業地帯の一部で、近年市街地のスプロール化にともない各種公害が発生し、河川汚濁、地盤沈下、大阪国際空港周辺の航空機騒音、臨海部周辺の大気汚染等が問題となつている地域である。また、尼崎市の一部は、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の対象地域である。
(エ) 北九州地域
 古くから八幡地区を中心に鉄鋼を主体とする重工業基地として発達してきたが、近年戸畑地区臨海部に拡張され、さらに響灘および新門司地区において大規模な開発が進められている地域である。当地域では、大気汚染、水質汚濁等各種公害が発生しており、とくに洞海湾の汚濁が著しい等の問題を生じている。
(オ) 大分地域
 新産業都市の中核として重化学工業コンビナートが形成され、各種公害が問題化しつつある地域である。47年以降鉄鋼一貫工場の操業が開始され、大野川右岸も工業開発が計画されている。
ウ 目標および達成期限
(ア) 目標
 各地域ごとに第二次地域に準じた目標値を示している。
(イ) 達成期間
 名古屋等地域、兵庫県東部地域および北九州地域はおそくとも56年を目途に目標を達成するものとし、鹿島地域および大分地域は目標を引き続き維持するための施策を強力に推進することにより、計画をおそくとも51年を目途に達成するものとしている。
エ 防止施設
 第二次地域に準じて、各地域ごとに各種の防止施策を総合的に組み合わせて、目標の達成を図ることを指示している。
 なお、自然環境の保護のほか監視測定体制の整備についても配慮するものとしている。
オ その他
 協力体制の確保に努め、また、当該地域に係る開発、環境整備、水源の利用、防災等に係る計画との整合性に配慮するものとしている。

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