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第3節 

1 国連人間環境会議

 第1部で述べたように、環境問題に対する国際世論の高まりを背景に、本年6月ストックホルムで国連人間環境会議が開催される。1971年度においては、この会議の準備作業が活発に行なわれた。
 すでに、1970年度末の準備委員会において、会議の主要議題は、人間環境宣言を決議すること、及び?より良い環境のための人間居住の計画と管理、?天然資源管理の環境的側面、?広く国際的意義をもつ汚染物質の把握と規制、?環境問題の教育、情報、社会及び文化的側面、?開発と環境、?各種行動計画の国際機構、の6項目とすることが決定され、またストックホルム会議以前にある程度の実行措置を完了しておくべき緊急分野として、?人間環境宣言、?海洋汚染、?土壌保全、?モニタリングと監視、?自然保護がとりあげられ、それぞれの政府間作業部会(IWG)が設置されていた。
 各IWGの活動状況を略記すると、まず、人間環境宣言IWGは2回開催され、第1回は事務局の作成した「宣言の骨子案」をもとに検討し、第2回はこれに加えて、各国から提出された案を併せ検討し、本会議にはかる前文6項目、原則23項目の草案をとりまとめた。わが国は教育問題と、核兵器実験の禁止を提案したが、これらは両者とも、つぎのとおり草案に採用されている。
 原則16
 環境問題についての教育、とりわけ若い世代に対する教育は、個人、企業、及び地域社会が環境を保護・向上するようその考え方を啓発し、責任ある行動をとるための基盤を拡げるために必須のものである。
 原則21
 ひととその環境は、兵器とくに大量破壊兵器の実験の継続又は交戦中の使用による重大なる影響から免がれなければならない。
 海洋汚染IWGも2回開催され、海洋を守るために各国はどのような措置をとるべきか、その一般的なガイドライン、またグローバルな総合的計画、さらに、海洋への廃棄物の投棄を規制する方策について検討し、後者は、“投棄による海洋汚染の防止に関する条約”として、本会議で決定されることが期待されている。
 モニタリングと監視IWGは昨年8月開催され、モニタリングの定義、目的、対策、手法等について合意し、39項目の勧告を採択した。土壌保全IWGは昨年6月開催され、自然によるまたは耕作による土壌悪化を中心に論議され、勧告を採択した。自然保護IWGは昨年9月開催され、?世界遺産の保護条約案、?湿地保護条約案、?科学の島保護条約案、?野生動植物の輸出入の規制に関する条約案の検討を行なった。これらの4条約はいずれも今年度中に締結されることが期待されている。
 以上の5つのIWGの成果は、昨年9月と本年3月の準備委員会において検討され、事務局が作成し、本会議で審議される行動計画案のなかに、240項目の勧告案として盛り込まれている。
 わが国はこれら5つのIWGの全てに参加し、これらの作業に積極的に協力し、その貢献は準備委員会において高く評価された。

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