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第1節 

2 環境庁発足後の活動状況

 環境庁発足後の活動状況の主なものをあとづけてみればおおむね次のとおりである。
? 公害国会において抜本的に強化された公害関係諸法に基づいて環境基準および規制基準の設定強化を行ない、法施行面の充実を図ってきた。具体的には、いおう酸化物について、いわゆる過密5地域以外の地域については昭和48年に環境基準を維持達成し、かつ過密5地域については環境基準を早期に達成することを目標に、46年末に一般排出基準および特別排出基準の強化を図っている。また、47年1月には、浮遊粒子状物質の環境基準を設定し、同年3月末には、自動車排出ガスの量の許容限度の改正を行ない、使用過程車の一酸化炭素のアイドリング時における排出濃度の強化等を行なった。
 水質汚濁に関する環境基準の設定についても、国は、46年5月に東京港等33水域、同年12月に大阪湾等2水域、47年3月に信濃川等6水域について水域類型の指定を行なうとともに、都道府県においては条例により水域の指定を推進している。
? 従来の公害規制行政だけでなく、総合的な環境保全対策の実施に各種の努力を行なってきた。
 その一つは、従来から実施してきた公害防止計画の策定について、46年9月に、鹿島、名古屋等の第三次地域の基本方針の指示を行ない、その後も東京、神奈川等の第二次地域の計画承認のために地方公共団体に対して、指導助言を行なっている。
 第二は、環境保全関係予算の見積り方針の調整および各省庁の環境保全に関する試験研究費の一括計上を行なうことにより、各省庁の環境保全行政の総合的実施の確保を図っている。
 第三は、広域的な環境保全対策の実施である。具体的には汚染の著しい瀬戸内海水域の環境保全を図るために、46年10月の閣議了解に基づき、瀬戸内海環境保全対策推進会議を設置し、赤潮問題、水質汚濁問題、自然保護問題等について検討を重ねた結果、同年12月に当面緊急に行なうべきものを中間報告としてまとめ、その後各種調査および地方公共団体の開発計画のヒアリングを実施している。
 第四は、46年10月に今後の環境行政およびこれに関連する行政の指針となるような長期的なビジョンの作成を、中央公害対策審議会に諮問し、国民的欲求に対応した環境政策の長期的な展望の検討に着手している。
? 新公害に対処するための対策を開始した。
 具体的には、光化学スモッグ対策として、その発生メカニズム、要因物質の測定方法、人の健康に及ぼす影響等を解明し、効果的な対策を講ずるため、46年11月に環境庁を中心にして国、地方公共団体および学識経験者よりなる光化学による大気汚染対策連絡会議を設置し、国および地方公共団体が協力して対策の確立を検討している。なお46年度は、予備費120百万円を計上した。さらに、PCB汚染問題については、46年度には、科学技術庁の特別研究促進調整費37百万円をもって国立試験研究機関を中心として、PCBの分析技術、汚染メカニズムおよび慢性毒性に関する研究を実施している。
? 公害に係る被害者の救済については、従来から「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」の円滑な運用を図ってきたところであるが、さらに、裁判上、被害者の迅速な救済を図るために、民法の一般原則の例外たる無過失責任立法の検討に着手し、その結果大気汚染および水質汚濁に係る健康被害について無過失責任とすることとし、このための法律案を47年3月に国会に提出した。
? 自然保護行政も積極的に展開してきた。
 日光国立公園の尾瀬の観光自動車道路建設の中止問題に端を発した自然保護運動の高まりは、その後自然公園内の道路建設、原子力発電建設などについて国土開発と自然保護との均衡等の問題を提起したが、これに対して積極的な自然保護行政を展開し、具体的に個々の事例について、自然保護に十分留意して解決策を講ずるよう努めてきた。
 しかしながら、自然保護行政の基本理念を確立し、自然破壊の防止の実効性を確保するためには、あらたな法制度の必要性が痛感されたので、その立案作業を開始し、現在「自然環境保全法(仮称)」を国会に提出すべく検討しているところである。

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