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第5節 

1 土壌汚染の現況

 近年、産業活動の伸展等に伴い、大気の汚染、水質の汚濁等による公害が各地で発生しているが、これら大気の汚染、水質の汚濁等を媒体としたカドミウム等による農用地の土壌の汚染も各地で顕在化しており、人の健康の保護および生活環境の保全の観点から大きな社会問題となっている。
 土壌汚染による被害は、主として鉱山、工場等から排出された排水、ばい煙等に含まれる有害物質による人為的汚染が、ときには自然的汚染との重複等の形で長期間農用地の土壌を汚染し、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産されること、あるいは農作物等の生育が阻害されたりすることにより生ずるものである。
 土壌汚染の原因となる物質としては、現在、カドミウム、銅、亜鉛等の重金属類がその中心であると考えられるが、これらのうちカドミウム等については、人の健康上問題のあるものとして、また、銅、亜鉛等については、農作物等の生育上問題のあるものとして考えられている。
 重金属類に起因する土壌汚染の実態は、第5-5-1表のとおりである。
 なお、カドミウムによる土壌汚染が問題となっているところとしては、現在「カドミウム環境汚染要観察地域」として指定されている地域等があげられ、また、銅による土壌汚染が問題となっているところとしては、栃木県、群馬県の渡良瀬川流域、秋田県の米代川流域等があげられる。
 わが国にこのような土壌汚染がみられるのは、上流にある鉱山、工場等から排出される排水等を含む水が農用地にかんがいされるためである。

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