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第4節 

1 廃棄物処理の状況

 従来、市町村が中心となって行なってきた清掃事業は、人の日常生活に伴って生ずるし尿や家庭からのごみ等の一般廃棄物を対象としてきた。
 しかしながら、近年の人口の都市集中と産業活動の発展は、廃棄物の質の多様化と量の加速度的な増加をもたらしており、その処理について、従来の市町村による処理体制では、十分に対応しきれなくなった。とくに事業活動に伴って生ずる産業廃棄物については、生活環境の保全上適性な処理処分が不可欠であり、排出者の責任による処理を推進すること等を目的として、昭和45年12月には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が制定された。
(1) 一般廃棄物
 し尿の処理および便所の水洗化の動向は、第5-4-1表に示すとおりであるが、くみ取りし尿の計画収集量は、水洗化人口の伸びにもかかわらず処理区域の拡大に伴って増加を続けている。
 従来、し尿のほとんどは肥料に用いられ相当の価値を持っていたが、工業の発達による化学肥料の供給と防疫の面からし尿の衛生的処理が必要となってきた。し尿の処理については、公共下水道による水洗化処理が望ましいわけであるが、わが国の現状では財源、建設用地問題等により、その完全実施は早急には望めない。
 一般に、し尿の処理方法のうちで水洗化による処理と、くみ取りし尿処理施設または下水道終末処理施設に運んで処理する方法とを合わせて衛生的処理と呼んでいる。くみ取りし尿の衛生的処理率は、昭和40年当時の47%に比較すればかなり改善されたが、昭和44年度においても未だ70%に達していない状況である。海洋投棄等の不衛生的処理は、急速な人口集中がみられ、かつ用地取得が困難となってきた都市地域においても続けられているが、第1次および第2次の施設整備5ヵ年計画によって逐次改善されてきている。
 し尿浄化槽による処理率の伸びは、下水道整備の進展と住民意識の向上とによって顕著となっているが、その放流水による環境汚染を防止するためには、それらの施設の十分な維持管理が必要となる。
 ごみ処理の動向は、第5-4-2表に示すとおりである。わが国では、最終処分地としての用地が限定されるので、ごみ処理は可燃性のものは焼却後、その残灰の埋立てを、不燃性のものは破砕または圧縮後に埋立てを行なうことを基本とするが、昭和44年度末で約半量が焼却されているにすぎず、なお相当量のものが直接に埋立てによって処分されている。
 ごみの1人1日当りの排出量は生活水準のバロメーターとされており、し尿の排出量が1.0〜1.5l/人/日の生理的範囲にとどまるのに対して、ごみの排出量は所得水準と正の相関があり、昭和40年度以降の平均伸び率は年5.9%を示しており、この伸び率が持続するものとして推計すると、1人1日当りの排出量は昭和44年度の870gが昭和50年度には1,200gとなる。
 ごみの計画収集量は、年々増加しているにもかかわらず、総排出量の平均伸び率と同程度であるため、未収集量の増加が認められるので収集率の引き上げが必要である。


(2)産業廃棄物の処理
 産業廃棄物については、現在、各都道府県において実態調査が行なわれており、すでにいくつかの都道府県においてその結果が報告されている。第5-4-3表は、通商産業省が全国の主要工場を対象に行なった調査に基づき、産業廃棄物の処理方法別の数値を推計したものである。
 産業廃棄物は、いずれの地域においても廃土砂等の固形状の不燃物が多く、また、その他のものとしては、スラッジ類、廃油類、木くずが目立った存在である。したがって、建設業からの廃土砂、がれき、製造業からの廃油、廃酸、廃アルカリ、スラッジ、スラッグなどの処理処分をいかにして適正に行なうかということが産業廃棄物処理処分問題の課題である。
 厚生省の調査に基づく、奈良、栃木、長野各県の産業廃棄物の業種別排出量推計によれば、栃木県では農業からの廃棄物が、長野県では製造業からの廃棄物がそれぞれ首位を占め、大都市をかかえた都道府県に比較して建設業からの廃棄物がそれぞれ3位または2位となっている。
 次に三重県の四日市地域における大・中規模の製造業および電気業についての産業廃棄物の処分状況によると、自社処分が89%、委託処分が11%となっており、処分場所については、自社工場内が94.3%でほとんどを占めているので、おそらく自社処分している廃棄物の大部分は自社の敷地内または自社の所有地内に保管されていると考えられる。
 このように産業廃棄物は、不燃性のものが多く、売却による減量化が望めず、また、廃油、廃酸、泥状の廃棄物等、環境汚染の防止上特殊な処理を必要とするものも多い。

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