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第3節 

2 悪臭公害防止対策

(1) 悪臭防止法の制定
ア 悪臭防止法制定の経緯
 悪臭、公害対策基本法の制定当初(昭和42年)より、典型公害の一つとして定義されていたが、悪臭が感覚的公害であり、直接的に健康被害を引きおこすおそれがないものと考えられてきたこと、悪臭物質の把握および測定、被害との量的関係の推定等が困難であったこと、悪臭公害防止のための技術開発が遅れていたこと等により国の法律による一元的な規制を行なうことを見送ってきた。
 しかし、近年、これら技術的な問題が解決されつつあること、また、悪臭が多くの地域で社会問題となっている例が増加しており、さらに、法律を制定することにより悪臭防止に関する研究、開発の推進、事業者に対する税制、金融に関する助成措置の拡大等が期待しうることにかんがみ、国は悪臭防止法の制定に踏みきった。
 悪臭防止法は、昭和46年6月1日公布され、1年以内に施行されることとなっているが、その概要は次のとおりである。
? 本法は、事業場における事業活動に伴って発生する物質のうち、アンモニア、メチルメルカプタンその他不快なにおいの原因となり、生活環境をそこなうおそれのある物質であって。政令で「悪臭物質」として定めるものの排出を規制することとしている。
? 本法においては、都道府県知事が事業場における事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出を規制する地域を指定する方式をとっている。規制地域として指定する地域は、住民の生活環境を保全するため、悪臭を防止する必要がある地域である。
? 規制基準は、悪臭物質の種類ごとに、悪臭物質の感覚に対する刺激の強度(第5-3-4表)と大気中の濃度との関係を基礎として、総理府令で定める基準の範囲内において都道府県知事が定めることとしている。
? 規制地域内に事業場を設置している者は、その事業場の種類、規模、事業場に設置する設備等のいかんを問わず、その規制地域についての規制基準を遵守しなければならない。
? 都道府県知事は、規制地域内の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出が、規制基準に適合しないことにより、住民の生活環境がそこなわれていると認めるときは、悪臭物質を発生させている施設の運用の改善、悪臭物質の排出防止設備の改良その他の措置をとるべきことを勧告することができる。さらに、改善勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

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