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第2節 

2 地盤沈下対策

(1) 規制の強化
ア 工業用水および建築物用水の規制
 地盤沈下の原因となる地下水の採取を規制する法律として、現在、工業用水法および建築物用地下水の採取の規制に関する法律があり、それぞれ第5-2-2表および第5-2-3表に掲げる地域が、地下水の採取の規制対象地域として指定されている。
 昭和46年度には、首都圏南部地域における地盤沈下が深刻になっている実情に対処して、同地域において両法に基づく指定地域の拡大ならびに許可基準の強化が行なわれた。すなわち、昭和46年5月には東京都および埼玉県の工業用水法に基づく指定地域における許可基準が強化され、従来許可されていた洪積層下部からの取水も禁止され、主要な帯水層からの取水は事実上不可能となった。また、昭和47年2月に開催された中央公害対策審議会地盤沈下部会においては、両法に基づく指定地域を大幅に拡大し、また既指定地域における基準を強化すべき旨の答申が行なわれ、これを受けて関係政省令の改正が昭和47年4月初めに公布され、同年5月1日より施行されることとなったが、その内容は次のとおりである。
? 工業用水法の指定地域として、東京都の江戸川区、千葉県の江戸川以東の市川市および新京成電鉄線以西の船橋市のうち、既指定地域以外の地域ならびに松戸市を新たに指定すること。
? 建築用地下水の採取の規制に関する法律の指定地域として、東京都の特別区の既指定地域以外の地域、埼玉県の川口市、浦和市、大宮市、与野市、蕨市、戸田市および鳩ヶ谷市ならびに千葉県の市川市、船橋市および東葛飾郡浦安町を新たに指定すること。
? 千葉県の工業用水法の既指定地域および東京都の建築物用地下水の採取の規制に関する法律の既指定地域の許可基準を主要な帯水層からの取水が不可能となるような基準に強化すること。
イ 天然ガスの採取規制
 新潟地区の地盤沈下については、関係機関により種々の対策が講ぜられてきている。工業用天然ガスの採取については、鉱業法の運用により採取禁止や排水禁止を含む規制措置が過去5回にわたって実施されている。また、自家用天然ガスの採取については、市町村条例による規制が実施されている。
 昭和46年度においては、地盤沈下状況の調査、観測が継続された。なお、地下において水とガスを分離する水溶性天然ガス新採取方法の現地基礎研究の成果に基づき、新潟県下地盤沈下総合対策の一環として企業化実験が開始された。
 一方、千葉県の葛南地域、千葉市およびその周辺地域ならびに九十九里地域の地盤沈下は、水準測量および観測井による観測等の結果から、地下深部からの揚水も沈下の原因をなしているものとされている。これらの地域の工業用天然ガス採取については、すでに鉱業法に基づく採取に伴う排水規制の措置がとられた。とくに沈下の著しい船橋市については、地方公共団体ならびに天然ガス採取事業者の協力を得て、昭和47年1月から天然ガス採取について全面規制が行なわれ、また、地盤沈下状況の把握に必要な調査、観測ならびに排水規制が行なわれた。


(2) 工業用水道の建設
 地盤沈下を防止するためには、一方において工業用水井戸の新設を禁止するとともに、他方において地下水の代替水源としての工業用水道を建設することにより円滑かつ速やかに水源転換を行ない、既存の井戸による地下水の採取を禁止することが必要である。このため、昭和31年度から地盤沈下の防止を目的とする工業用水道の建設に対し、国庫補助金を交付することによりその建設の促進を図ってきており、昭和46年度末までに25の地盤沈下対策工業用水道が完成または一部給水を開始している(第5-2-4表)。
 昭和46年度においては、前年度に引きつづき埼玉中央第一工業用水道事業(昭和46年度事業費470百万円)に対し、188百万円の補助金を交付してその事業を推進した。


(3) 地盤沈下対策事業
 東京、大阪およびその周辺地域においては、地盤沈下による排水不良と高潮による被害の危険性が増大している。このため従来河川改修事業および高潮対策事業として河川の整備や内水排除施設の整備等を進めてきており、地盤沈下地域を高潮から守るための防潮堤は、ほぼ完成している。
 昭和46年度は、高潮対策事業を実施したほか、新たに地盤沈下対策河川事業(埼玉県および千葉県)および耐震対策河川事業(東京都江東地区)により、地盤沈下ならびに関東大地震級の地震にも対処しうるよう、内部河川の整備、排水機場の設置等に着手した。
 新潟地域においては、地盤沈下により機能の低下した河川管理施設を復元するため、昭和33年度から通船川、栗の木川、旧信濃川、大通川、中の口川の河川改修を行なってきており、これまでに中の口川を除く河川を完成し、昭和46年度は中の口川の堤防かさ上げ工事を実施した。また、従来行なってきた信濃川河口部の港湾施設の復旧作業は昭和46年度に完成した。このほか地盤沈下による農業用施設の被害も復旧するため、県営土地改良事業として新潟地域特殊排水事業を実施した。

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