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第1節 

2 自然環境保全の動き

(1) 自然保護条例の制定
 わが国の自然環境が急速に破壊されつつある状況に対応して、新しい観点から自然保護を強力に推進するため、各都道府県において自然保護条例の制定の気運が高まっている。この自然保護条例は、昭和45年10月北海道において制定され、ついで昨年3月香川県、同年7月長野県において制定され、その後たちまちほとんどの都府県において条例制定の検討が開始されている状況であり、昭和47年3月末現在22道県において自然保護条例が制定されている。
 このように全国的に制定されつつある自然保護条例は、大別して三つのタイプに分類される。すなわち、第1のタイプは、鹿児島県および秋田県にみられるような自然保護に関する県の施策ないし責務や自然保護審議会の設置等自然保護に関する基本的事項を定めた「自然保護基本条例」であり、第2のタイプは、宮崎県にみられるような国道、県道等の沿道の修景美化を内容とする「沿道修景美化条例」であり、第3のタイプは、狭義の「自然保護条例」で、おおむね、自然保護に関する基本的事項を定めるとともに、特別の必要から保護すべき地域を定め、その地域内における一定行為につき許可制ないし届出制を採用している条例であり、長野、香川、兵庫などの各県の条例がこのタイプに属する。第3タイプの自然保護条例の内容のうち保護すべき地域についてみると、各道県によりその態様および名称に若干の差異はあるが、おおむね、市町村の市街地およびその周辺地のうち環境緑地として維持する必要のある「環境緑地保護地区」、森林、山岳、渓谷、海岸などの所在する地域のうち良好な自然景観地として保護する必要のある「自然景観保護地区」、原生林、湿原、野生動物の生息地のうち貴重な自然状態を保持し、または学術上重要な地域であって、自然の原始性等を将来にわたって確保する必要のある「厳正保護地域」、自然保護と開発利用との調和を図る必要のある「自然活用地域」に分類され、このような地域内において、工作物の新築、木竹の伐採、土地の形状変更等の現状変更をする場合には知事の許可(長野、山梨、兵庫県など)を受け、または届出(香川、埼玉、石川県など)をしなければならず、その場合において、知事は、自然保護の見地から必要があるときは助言、勧告ないし必要な措置命令を出すことができることとなっている。
(2) 自然保護憲章の制定の動き
 古来、世界的にみてもすぐれているといわれているわが国の自然環境が、ややもすると急激な都市化、工業化により、無秩序に破壊され、都市の住民にとっては自然と接する機会すら乏しくなっている。このような現状から、わが国の自然環境を保全するとともに、すべての国民が真の自然のあり方を理解し、人間が生存していくうえにおいていかに自然が大切であるかを十分認識する必要があるとして、自然保護憲章の制定の必要性が関係者の間で叫ばれていたが、このたび自然保護協会において、同協会の研究部会が中心となり、全国130余の自然保護団体の意見等も入れてまとめた自然保護憲章案が了承され、同協会案として発表された。
 今後の運びとしては、近く重ねて前記130余の自然保護団体の代表者の参集を求めて審議を尽くした上でさらに従前の老人福祉宣言、児童憲章等の前例にならい、より広く国民の総意を反映させたものとして、各界の関係者を網羅した自然保護憲章の制定会議を開いて制定される見込みである。

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