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第1節 

1 大気汚染による健康影響

 大気汚染の人体に対する影響は、目、耳、鼻、咽喉頭への刺激症状などもあるが、特に大気汚染の影響により多発すると考えられている疾患は、現在慢性気管支炎、気管支ぜん息、ぜん息性気管支炎、肺気しゅ等閉塞性呼吸器疾患と総称されるものである。各種の疫学的調査研究により、地域におけるこれらの呼吸器系疾患の有症率といおう酸化物の濃度や浮遊ふんじんの濃度との間に相関のあることが知られている。さらに、窒素酸化物、一酸化炭素等他の汚染物質も呼吸器系疾患に影響がある。したがって、このような呼吸器系疾患多発の原因としては、いわゆる複合した大気汚染の影響によるとされている。
 通常、いおう酸化物といわれているのは亜硫酸ガス、硫酸ミストなどであり、大気中ではこれらが単独で存在することはまれで、浮遊ふんじんと共存、あるいは浮遊ふんじんの表面へ付着または吸着して呼吸器系に入り、慢性気管支炎等の呼吸器系の疾患をひきおこす。大気中の窒素酸化物は、呼吸機能、呼吸器系の炎症感染の促進等、窒素酸化物による直接影響のほか、紫外線の作用により酸性物質を生成、光化学スモッグの原因の一つとして被害を与えている。一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンと結合し酸素の補給を阻害するほか、肺胞における一酸化炭素ヘモグロビンの解離阻害および体内の呼吸酵素と結合したり、反応したりして、各種の生理機能の障害を起こすことが知られている。

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