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第6節 

2 海洋汚染防止対策

(1) 規制措置の強化
 船舶および海洋施設から沿岸に油および廃棄物を排出することを規制し、廃油の適正な処理を確保するとともに、海洋の汚染の防除のための措置を講ずることにより、海洋の汚染を防止し、もって海洋環境の保全に資することを目的として昭和45年12月に海洋汚染防止法が制定されたが、そのうち、油濁防止管理者の選任、廃油処理に関する規制、大量の油の排出があった場合における防除措置、廃船の規制等一部の規定が昭和46年6月から施行され、規制の強化が行なわれた。
(2) 廃油処理施設の整備等
 船舶の廃油については、油性バラスト水、タンク洗浄水およびビルジ等の処理のために、廃油処理施設の整備が鋭意進められている。
 廃油処理施設の整備は、主として石油会社、船舶所有者、造船所等により行なわれてきたが、そのほか専門の廃油処理業者によっても行なわれている。また、民間による廃油処理施設整備が期待できない港湾においては、港湾管理者による整備が行なわれている。
 廃油処理施設の整備に当たっては、港湾管理者が整備するものについては国による補助が、港湾管理者以外の民間処理施設設置者に対しては、日本開発銀行および中小企業金融公庫からの融資のあっせんおよび固定資産税の減免、特別償却による法人税の軽減等の税制上の特別措置が行なわれてきた。
 このほか、昭和46年度から新たに、廃油処理船、集油船の建造に対しては、船舶整備公団による助成が行なわれている。
 廃油処理施設は、昭和47年度末までに、44港67カ所(その他沖縄において1港1カ所)の施設が完成することになっており、昭和47年2月現在、24港39カ所の施設が完成し、操業を開始している。
 なお、船舶の廃油のうちビルジについてはこれを船舶内で処理するため油水分離装置、漏油防止装置等のビルジ排出防止装置の設置が義務づけられているが、昭和46年12月末までに油水分離装置の形式承認を行ったものは8社58機種である。


(3) 監視取締り体制
 年々悪化する海洋の汚染に対処するため、海上保安庁では、従来から、海洋汚染の多発する東京湾、伊勢湾、瀬戸内海を重点海域として、巡視船艇、航空機の連携による監視取締りを行なってきたが、昭和46年度には、本庁警備救難部に海上公害課を、また、重点海域を管轄する第三(横浜市)、第四(名古屋市)、第五(神戸市)、第六(広島市)各管区海上保安本部に海上公害監視センターを設置したほか、監視取締りに有効な高速かつ近代的装備を備えた巡視艇、ヘリコプターの増強を図るとともに、ガスクロマトグラフ、濁度計等の監視取締り用機材を整備するなど、監視取り締まり体制の充実強化を図り、海洋の汚染状況の監視および海上公害事犯の取締りを強力に実施した。
 また、全国一斉に、あるいは地域別に厳重な特別取締りを実施して、海洋汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の法令の励行と違反の防止に努めた。
 なお、昭和46年における海上公害関係法令違反の検挙状況は、第2-6-4表のとうりである。


(4) 流出油防除体制の強化等
 タンカー等の油流出事故については、従来から、油防除資器材の整備等に努めるとともに、石油コンビナート所在地等に大型タンカー事故対策連絡協議会を設け、官民の協力体制により被害の局限措置をとるように努めてきたが、海洋汚染防止法の施行に伴い、大量の油が排出された場合の通報、排出油の防除のための応急措置等所要の規制が行われることとなった。
 昭和46年11月、新潟沖において発生したタンカー「ジュリアナ号」の大量原油流出事故にさいしては、海上保安庁を中心に関係官民の総力を結集し、流出油の防除、残油の瀬取り等の措置を実施した結果、被害を最小限度にとどめることができた。
 なお、ジュリアナ号の事故にかんがみ、油防除資器材の開発、油処理システムの確立および防除資器材の備蓄基準の設定等、流出油防除体制の充実強化に努めるとともに、タンカー等の事故防止を図るべく海上交通安全法(案)の制定等抜本的対策を講じることとしている。
(5) 海洋汚染防止技術の研究開発
 ジュリアナ号事件を契機として、とくに化学剤による油処理に伴う二次公害の発生、物理的な油吸着処理の必要性が問題とされた。この問題については、昭和46年12月、運輸省に「タンカー事故による油汚染の緊急処理対策に関する特別研究委員会」を設置し、科学的な油処理剤の有害性の研究および物理的な油吸着剤の吸着能力、投入・回収方法、終末処理方法等についての研究を実施中である。
 なお、運輸省船舶技術研究所においては、波浪中における流出油等の拡散状態の予測を行うための研究を推進するとともに、油回収船に設置する自航式の油水吸引器と簡易油水分離器とからなる油回収装置の開発研究を行なっている。
 また、港湾技術研究所においては、海洋汚染対策調査の一環として東京湾および大阪湾内における海水交換および汚染物質の希釈拡散の機構を解明するため、東京湾および大阪湾の大型全域模型を使用した水理模型実験を行なった。
(6) 国際協力の推進
 海洋汚染はグローバルな現象であり、国際的な汚染防止体制の確立が不可欠である。
 わが国においては各国に先がけて「海洋汚染防止法」を制定する一方、IMCO会議、国連人間環境会議準備委員会等の国際会議に積極的に参画し、国際的協力体制の早期確立に全力を尽くしているところである。
(7) その他
 海洋は、国民一般に広く開放され利用されており、海洋汚染の防止については、国民の協力が不可欠である。このため、昭和46年6月21日から1カ月間、運輸省および海上保安庁が主体となり、「海をきれいにする月間」運動を全国的に展開し、パンフレットの配布、ポスター、写真等の展示、講演会等を行なうなど、海洋汚染防止思想の啓蒙に努めてきた。また、昭和46年10月末には、運輸省において「廃油ボール防止緊急対策要綱」をとりまとめ、深刻化する廃油ボール発生の防止を図るため指導を強化した。

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