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第6節 

1 海洋汚染の現況

 経済の大型化、消費水準の上昇等により増加の一途たどる廃棄物は、直接又は間接に毎年大量に海洋へ流入し、海洋汚染を拡大している一方、重金属類等の有害な物質による汚染も深刻化している。また、原油輸送を中心とする海上輸送の活発化に伴い、船舶からの廃油の排出が増大し、油による汚染も大きな問題となっている。
(1) 港湾
 港湾は、陸上から排出される汚水の影響を強く受けるとともに、船舶交通の輻そうする海域であるため船舶からの油等の排出も多く、また、地形的にも比較的閉ざされた海域であり、海水循環も悪いなどのため、洞海湾、田子の浦等にみられるように、海洋汚染は局地的には相当進んでいる。
 主要漁港における水質汚濁の状況を「水質汚濁に係る環境基準」(昭和45年4月21日閣議決定)で定めている健康項目の基準値およびC海域における生活環境項目の基準値と比較したのが第2-6-1表である。


(2) 沿岸海域
 海上保安庁が、具体的に確認したわが国沿岸海域の汚染の発生状況は、第2-6-2表のとおり、昭和46年には1,621件で、昭和45年の440件にくらべ約3.3倍に増加している。
 これを種類別にみると、油によるものが圧倒的に多く、全体の約80%を占めている。また、海域別にみると、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海(大阪湾を含む。)に多発しており、昭和46年には、全体の約72%がこれらの海域で発生している。
 また、特異な汚染として、ここ数年来、わが国各地の沿岸に廃油ボールと呼ばれるタール状油塊が漂流して、漁網やのりひびを損傷し、漁獲物に悪臭を付着させる等の漁業被害を発生させている。また、海岸に漂着した廃油ボールは、景観をそこない、海水浴場の利用を阻害するなど、国民のレクリエーションに悪影響を及ぼしている。
 廃油ボールは直径2〜5cmのほぼ球形のものが多く、なかには、フットボール大から直径50cmに達する大型のものもある。
 これら廃油ボールの発生源は、現在のところタンカーから排出されるタンク洗浄水、油性バラスト水およびスラッジがその主因ではないかと考えられている。
 海上保安庁が調査した昭和46年4月から12月までの廃油ボールの漂流、漂着分布状況によると、南西諸島、九州南岸、熊野灘、伊豆諸島および鹿島灘にかけての黒潮海域に集中しているが、三陸海岸、日本海沿岸、北海道沿岸などでも発見されている。

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