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第3節 

1 水道原水の汚濁

 水質汚濁による水道の被害は年々増加しており、その態様は二つに分類される。一つは、汚濁が徐々に進行していく場合で、ある段階までは浄水技術の工夫や改良により住民にまで直接影響を及ぼすような事態は防げるものであり、もう一つは、汚濁物質が急激に増加した場合で、取水の停止を余儀なくされたり、汚濁した水を直接給水するなど、住民に直接的な被害を与えるものである。
 前者のような場合は、いつから被害が起こったか明らかでなく、緩速ろ過池を急速ろ過池に変更したり、取水地点を上流に移したり、最悪の場合は水源地を放棄するという事例が多いにもかかわらず、それは水質汚濁による水道の被害としてとらえられない傾向がみられる。汚濁源が不特定な都市近郊の河川における水道では、とくにその傾向が強い。
 厚生省が行っている「水質汚濁による水道の被害状況調査」においても、報告された被害なの多くは汚濁物質の一時的な増加による直接的被害である。この調査によると、昭和45年度の被害件数は、292件であり年々増加の傾向にある(第2-3-1図)。
 また、最近の傾向では、大都市や大工業地帯の周辺に集中していた被害が水質汚濁の広域化に伴い、地方都市にまで広がっている。したがって、施設の管理状態が十分でなく、水質技術者の不足するこれら中小都市では、深刻な問題になりつつある。
 報告された被害を原因別にみると(第2-3-1表)、昭和45年度においては、「その他」原因の急増が目立っている。この内訳は、プランクトンや藻類の異常大発生による水源の富栄養化が大部分を占めている。また鉱工業排水による被害も大きい。被害内容としては、ろ過池の閉そくが頻繁になったり、あるいは浄水処理に要する薬品の量や種類が増加するなど単に浄水技術上の問題にとどまるものから、沈澱池やろ過池の構造あるいは取水の位置や構造をかえるなど施設変更にいたるものまである。
 また、有毒、有害物質や異臭味物質、着色物質等による突発的な汚濁による被害では、取水制限・停止にとどまらず、給水停止を行なったり、さらには対策がまにあわず異臭味水や着色水を給水するなど水道を利用する住民が直接被害を受けたものもかなりの数にのぼっている。昭和45年に利根川から取水している東京都、培玉県等の水道で発生した「臭い水」事件や、琵琶湖等における藻類の異常発生による「臭い水」事件がいまや慢性化して、琵琶湖を水源とする水道事業体に深刻な被害を与えていることは、すでによく知られているところである。
 水道の被害を原因、物質別にみると、従来は赤痢等の伝染病の集団発生の原因となる病原菌や、急性毒物による汚濁等がとくに問題とされていたが、最近では、これらのほかに通常の浄化処理によっては、除去が困難な異臭味物質や着色物質等による被害も激増している。
 このように年々悪化する水道原水の汚濁に対処するために、水道事業体においては原水の水質監視を強化するとともに関係者(水道事業体や汚水排出者たとえば企業体)間で水質汚濁防止のため連絡協議会を設けて、相互の事情交換や通報体制を整備している。

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