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第2節 

3 湖沼

 湖沼は、自然の状態においても、窒素、リン等の栄養塩類が流入することによって、湖水中の生物が繁茂成長し、さらに生物体内に移行することによって湖水中に蓄積され、累進的に水質が悪化するところのいわゆる富栄養化が進行する。
 この湖沼の富栄養化は、不可逆的であるといってよく、一度富栄養化すれば、その後に汚濁源を排除しても湖沼の流水停滞性からして容易にもとの状態にもどらないことがその特徴である。この点においては、湖沼の水質汚濁は河川とは異なった側面をもち、湖沼の大きな弱点ともなっている。
 最近のわが国の湖沼の水質汚濁の状況についてみると(第2-2-3表)、全般的に汚濁が進行している傾向にある。
 とくに、湖周や流域における産業の活発化や観光開発の進行に伴って、有機性の工場排水、家庭下水あるいは観光地における旅館からの排水等が増大し、富栄養化のテンポが自然の状態に比較して、著しく促進されている。その一例として、富栄養化の重要な指標である全窒素の含有量の経年変化を示した霞ヶ浦の土浦浄水場における水質調査表をみると(第2-2-4表)、昭和32年から昭和46年の14年間に全窒素の含有量は実に約6倍にも増大し、加速度的な富栄養化現象を示している。
 湖沼の富栄養化による最大の被害は上水道用水における異臭の問題である。この異臭(「かび臭」)の問題は富栄養化が進行しつつある琵琶湖や霞ヶ浦等において発生している。
 琵琶湖を例にとると、富栄養化が進むに従って、昭和39年頃から琵琶湖内にプランクトン、藻類が異常発生するようになり、琵琶湖の水を取水する京都市をはじめ、下流淀川流域の水道のろ過池のへいそく障害が起こり始めた。さらに昭和44年から京都市の水道でかび臭が発生し、昭和45年には京都市のみならず、大津市をはじめ、淀川本流から取水する水道においてもかび臭が認められた。
 また、霞ヶ浦においても、昭和40年頃から異臭の問題が発生しており、毎年その深刻さを増している。
 そのほかの富栄養化による被害としては、諏訪湖では植物性プランクトンである「アオコ」といわれる青色の浮遊物が湖面の一部をおおい、湖の景観をそこなっており、河口湖、芦ノ湖では、観光開発にともなう排水によって富栄養化が促進され、透明度が低下している。

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