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第1節 

1 水質汚濁の現況

 昭和30年代以降の著しい産業の発展および都市への人口集中に伴い、各地において、水質汚濁に伴う各種の問題が発生してきた。この水質汚濁は人の健康、上水道、漁業等に対する直接的被害および水泳等のレクリエーション活動の場としての水域の価値の減少等の間接的被害をもたらしている。
 最近のわが国の水質汚濁の状況を示したものが、第2-1-1図および第2-1-1表である。昭和41年の年間平均水質と昭和45年の年間平均水質を比較してみると、47カ所中汚濁が進行していると思われるのが23カ所、改善方向もしくはほぼ横ばい状態にあるのが24カ所であり、全体的に汚濁のテンポは鈍化したが、必ずしも改善方向に向っているとは考えられない。とくに、都市部の市内河川の水質汚濁がいぜんとして著しく、水利用はおろか、悪臭の発生限界(BOD10ppm程度)を越える程度に汚濁していることおよび一度汚濁した場合には容易に改善することが難しい湖沼の水質の汚濁が進行していることが明らかである(第2-2-3表参照)。
 また、地域的に眺めると、京浜、阪神、名古屋地区を中心とした東海道ベルト地帯の水質汚濁が著しいほか、新産業都市および工業整備特別地域が比較的集中している瀬戸内海沿岸部の海域の水質の汚濁が目立っている。その他の地域においては、地方の中核都市(福岡市、仙台市等)や公害型産業の存在する地域を除くと、全般的に水質汚濁の程度は低い。
 一方、公共用水域におけるカドミウム等の有害物質による汚染状況を昭和45年度に調査したものが第2-1-2表であり、これによると調査対象109水域に対して、1検体でも環境基準値に適合しなかった水域を環境基準値に適合しない水域とすると、その数は23水域である。検体数で数えると、調査総検体数16,164のうち環境基準に適合しない検体数は222で、全体の1,4%を占めている。

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