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第1節 

4 大気汚染による財産被害者等

 工業地帯の近郊や都市等の大気汚染の著しい地域においては、慢性気管支炎等の健康被害(第3章第1節大気汚染による健康被害状況参照)の多発のほか、農林作物や財産に係る被害も多発してきている。
(1) 農林被害
 農林作物等の植物に被害を与える大気汚染物質としては、二酸化いおう、弗化水素、ふんじん、オキシダント等があり、これらの物質が農林作物に対して生育障害、収穫量の低減、品質の低下等の影響を与えている。
 これらの物質による農作物等に対する影響の態様は、物質の種類、濃度または量、曝露時間、気象条件、作物の種類および生育時期、栽培条件、植物の種類および品種等の要因によって大きく異なる。
 二酸化いおう、弗化水素および塩素ガス、オキシダントの場合は主として植物体内に吸収され、葉組織の破壊、生理代謝のかく乱等を起こすのに対し、ばいじん、ふんじんの場合は主として葉面に付着して気孔や水孔を閉鎖し、植物の呼吸作用、同化作用を阻害する傾向があるが、これらの物質に対する植物等の抵抗力については、その種類、品種、生育時期および栽培条件等により著しく異なる。
(2) 財産被害
 大気汚染による財産上の被害としては、日常の家庭生活においては、洗たく物やトタン屋根等の被害が一般的であり、このほか、美術品や金属製品の腐蝕、繊維や皮革製品のぜい弱化、外壁ペンキの変質、建物の耐用年数の短縮やゴム製品のひび割れなどの各種の被害が知られている。
 これらの被害は、生活実感として感覚されるが、その損失額を具体的に調査は握することは、困難であり、今後、これに関する調査方法を確立し、その実態調査の実施が望まれている。
(3) その他の被害
 視程の障害等今日における大気汚染は、住民の日常生活に不快感を与え、美観を損なうほか、航空機の有視界飛行を困難にしている。

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